それでも長らくは東武久喜駅から地下鉄に直通する列車は設定されておらず、多くの人がJR(昔は国鉄)を利用するのが一般的だった。大宮駅まで20分、東京駅や新宿駅まで1時間もかからないから、遠いような気がしても意外に近い。なので途中で乗り換えを強いられる東武ではなく、JRを利用する人が多かったのだろう。

風景も変わり…「ザ・埼玉」な光景も

 いまもJRのお客のほうが多いことは変わっていないが、2006年に半蔵門線・東急田園都市線に乗り入れる列車の終点になってから、東武久喜駅の利用者も増加した。

 こちらに乗れば、北千住まで30分から40分ちょっと、大手町まで乗り換えなしで1時間15分ほどで行くことができる。始発駅だから、朝のラッシュ時でもちょっと待てば絶対に座れる。選択肢が増えたということで、久喜の町はますます便利になった。

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 そうなると、“北関東”らしい駅前風景は少しずつ変わっていく。昔ながらの商店街があった提灯祭り通りに加え、駅前から西に向かうもう1本の大通りが整備され、バスやクルマの通行はいまはこちらがメイン。道沿いに何があるかと問われると悩ましいが、ぎょうざの満洲があったところにザ・埼玉を感じるものである。

 ちなみに、駅から少し北に向かって歩いて行くと、URの団地やスーパーホテル、そしてイトーヨーカドーまであったりする。駅から歩いてざっと10分。団地やマンションの類いがあれば、お客に困ることはないのだろう。

 

 そして駅の近くではないが、久喜市内にはアリオ鷲宮やモラージュ菖蒲といった郊外大型商業施設もある。日常的には駅の近くのクッキープラザやイトーヨーカドー、休みの日には大型商業施設に足を運ぶなどという使い分けをすれば、都市と地方のいいとこ取りをしている感じでいい具合なのだ。

 そんなわけで、久喜の町を歩いていると、お年寄りから会社員風の人、ベビーカーを押したお母さんまであらゆる人を見かけることができる。久喜藩の陣屋があったとされる小さな公園では子どもたちが遊んでいた。

 なによりJRと東武を選んで都心に向かえる利便性はなかなかのもの。1時間前後という都心への所要時間を長いとみるか短いとみるかは人それぞれだが、14階建てマンションが計画されるのもよくわかる。

 近年は都心回帰の影響で人口が減りつつあったが、コロナ禍で郊外移転が進むと、もしかしたら久喜の時代がこれからやってくる……のかもしれない。

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