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 これに対し、青木勝利はこうなる。

「非行少年で、警察に逮捕されかけると大暴れし、少年院送りとなる。入院時には“歓迎リンチ”に遭うが、逆に持ち前の腕力で制圧。また、そこではボクシングと出会い、夢中になる。院内では(枕を使った)ボクシング試合を行うが、負け知らず。退院後は、出来たての三鷹ジムに所属し、近所の商店に勤めながらプロボクサーとしてデビュー。以後は(主に)バンタム級選手として活躍。強打でKOの山を築き、連勝街道を驀進するが、ライバル・海老原博幸には痛烈なKO負けを喫する。しかし、やがてはそこからも立ち直り、東洋バンタム級タイトルを獲得。一方、その頃からは次第に体が(アルコールを含む)ドランカー症状に蝕まれ始める。世界バンタム級タイトル戦では、名王者エデル・ジョフレに敗れ、結局悲願は果たせずに終わる」

 これは単に「似ている」というより、「酷似」といってもよいのではないか。

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©️iStock.com

原作・梶原一騎も非行から「這い上がった」スターだった

 実際、梶原は現役時代の青木に、大きな興味を抱いていたことも判明しており、また前述の通り連載開始にあたっては、ちばとともに選手の取材なども熱心に行っているのである。元・非行少年で教護院に送られ、そこから「這い上がって」スター原作者となった梶原は、この青木の経歴を何らかの形で知って、深い共感を覚えていたのではないだろうか。もしその通りとすれば、ジョーが「バンタム級ボクサー」という設定も、多分に青木の階級を意識したものだったということになろう。おそらく梶原は、そんな青木のキャリアをなぞる形で『ジョー』のストーリーを紡いでいったのだ。そして、そこに斎藤清作や海老原博幸、小林弘のイメージも付け加えていった、とするのが最も自然な見方なのだといえよう。なお、これについてちばは、

「斎藤清作さんが『俺のこと、描いてるんだろう?』っていってきたことはありましたね。ただ、梶原さんから具体的に誰がモデルかは聞いていないんですよ。でも青木さんは……あったかもしれないですね」

 と話している。

 ちなみに、ジョーの風貌に関して、ちばは『東京ドーム(後楽園ホール)公式サイト』で、「(描く際に)影響を受けたのは一人だけではない。沢田二郎・青木勝利・海老原博幸・大場政夫・ピストン堀口などのイメージが合わさっている」とも語っている。