乳がんは女性が発症するがんの長年トップ。2015年は9万人近くの女性が新たに診断されると推定される。
昭和大学医学部乳腺外科の明石定子准教授が語る。
「母乳を乳頭まで運ぶ“乳管”や母乳を作る“小葉”の壁に発症するのが乳がんです。発症しやすい方の特徴は、お産に関することだと未産や35歳以上の高齢初産をされた方、生理の回数が多いのも関係しているため初潮が早い方や閉経が遅い方、それから遺伝性の場合もあるので家族に発症者がおられる方も注意が必要です。片方が乳がんになると反対側もできやすくなります」
年齢別の統計を見ると、30代から徐々に増えて一番のピークが40代後半、その後はやや減少し、二番目のピークは60代前半となる。
「飲酒と喫煙、食べ物なら動物性脂肪などをたくさん摂ると関係すると言われています。国内のデータで、みそ汁を毎日摂る人はそうでない人と比べて乳がんになる確率が低いという研究結果がありますが、みそ汁そのものより和食中心の食生活が効果的なのかもしれません。昔は乳がんが少なかったのは、そういう食生活が関係していると考えられています。乳製品は罹患数を増やすデータとそうでないデータがありますが、低脂肪乳では減らす可能性があります」
よく言われるのが、しこりを自分で発見するケースだ。自覚症状は早期発見につながるのか。
「基本的に早期だと自覚症状はほとんどありません。ある程度の大きさになるとしこりを触れたり、乳首の位置が左右で違う、皮膚がへこんでエクボみたいに見えることなどによって自分で気づくこともあります。痛みや張りは、乳がんとは通常、関係しません」
現在の検診は、国の指針で「視触診及びマンモグラフィ」と定められているが、2016年度からはマンモグラフィ(乳がん専用のX線装置)が原則となり、視触診は推奨からはずれることになった。
「死亡率が減少するというきちんとしたデータがあるのはマンモグラフィです。あまり若いうちからマンモグラフィを受けると被曝の問題もあるので、対象は40歳以上となります。乳房超音波検査なら30代で始めても差し支えありません。ご家族に若くして乳がんになられた方がいるなら、ご家族の乳がん発症年齢の5年か10年くらい前から検診を受けましょう。マンモグラフィも超音波も一長一短がありますので、2つ併せて行うのがおすすめです」
乳がん全体でも5年生存率は90%前後。早く見つければ命の心配はない。
「乳房温存か全摘かの判断は、がんの場所と乳房のなかでどう広がっているかによります。温存手術なら通常は放射線治療もセットで行います。ただ、かつては手術の7割が乳房温存でしたが、2013年から全摘後の乳房再建が保険適用になりましたので、温存しても明らかに変形しそうだなという場合には全摘再建を選択される方が最近は増えています」