「声優」は誰でもなれて食べていける職業なのか
では、「声優」という職業は専門的な知識や技能があれば、誰でもなれて一生それで食べていけるものでしょうか?
答えは、「否」です。
どんなに情熱があっても、どんなに才能があっても、どんなに運が良くても、なれない人はなれませんし、途中で挫折してしまう人もいます。逆に、ひょんなキッカケや偶然から「声優」として成功する人もいます。どんなに不安定な職業であっても、自己表現の止むに止まれぬ欲求から、どうしてもお芝居の道に進みたいという情熱が迸るくらいでないと「声優」という職業に就くのは難しいと思います。
現在、専門学校や養成所に通っている人の大半は、「声優」になれたらいいなという「夢」だけを追い求めています。
そこには当然、お芝居が好きだとか、自己表現が好きだとか演技をしたいだとかといった情熱を持っている人は少数です。声優になるにあたって本来コアとなる動機がないままに、「自分が好きなアニメやゲームに出る声優になりたい」というファンの延長線上にある願望、それ自体が動機になってしまっているのです。そういう人たちは多くの場合、無駄な時間とお金を入学や通学に費やすことになります。
どうしてコアな動機がないと無駄になるのか。結論を言ってしまいますが、それは「お芝居や演技のノウハウはお金を出して教わるものでもなければ教えられるものでもないので、お金を出して教えてもらうと考えている時点でその人は声優には向いていない」ということです。
漫画家志望は何をしている?
逆に、専門学校や養成所に入りたい理由が「自己表現が好きだから、お芝居が好きだから」というものだったらいいと思います。ですが、その人は本当に学校で学ぶ必要があるでしょうか?
第2章でご紹介した通り、多くの方が若いうちに一般公募のオーディションを通じてデビューを勝ち取っています。その中には専門学校や養成所を介さずにオーディションを勝ち抜いた人も大勢います。
本当に声優になりたい人は専門学校や養成所に通わなくても自分でやるべきことを探してやっていますし、それで実際に声優になれているのですから、まずは何かに頼ろうとせずに自分でやれることをやって目指すべきです。そして自分でやるべきことを探して実行すること自体が声優となった後、プロとして活躍し続けるための素養なのです。
たとえば、漫画家になりたいと思った人はまず何をしますか? まず学校選びでしょうか? 違いますよね。
そもそも漫画家になりたいと思う人は、そう思う前からまずは鉛筆と紙などその時手に入るもので絵を描いているはずです。そして人に見せてウケるかどうか反応を見て、次はもっと面白がられるものを描こうと頑張るはずです。
そのための練習は惜しまないでしょうし(というより描くこと自体が楽しくて仕方ないはずです)、必要を感じれば新しい画材やデジタル対応するためのタブレットを買ったり、学校に行って専門的な勉強をしようと検討したりするでしょう。
こういった「もっと漫画を描きたい」という思いが募った結果、漫画家になりたいという目標になるのです。