昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/03/28

 そういう人たちは、最初は人前で声を出すことすら恥ずかしくてできません。きちんと声を出すとか自分の意見を言うとか、そういうところから指導を始めました。

 まず自己紹介をしてもらって、どんなアニメが好きですか? という質問をして話をしてもらうと、とつとつと自分の考えや体験を話し始めます。

 それが数年ぶりの他人との会話だったりもするのですが、カリキュラムを通じて体を動かしながら台詞を言うだとか、人との絡みやエチュードにおいてアドリブで会話をするということをやっていくと次第に大きな声も出せるようになります。人見知りも減っていくし臆することなく人と話せるようにもなります。

 結果として声のレッスンを通じてひきこもりから脱し、その先は大学に行くもよし、働きに出るもよしです。学校の設立趣旨とは少し違いますが、声優養成所にはそういった社会復帰をする場としての意義もあるのかなと僕は思いました。

環境をどう活かすべきか

 声優になることを志しているみなさんには、もしかしたらこの例はすごく違和感のある話に思えたかもしれません。ですが、彼ら彼女らは「社会復帰」を目的として設定して、レッスンの結果、実際それを達成したのですから、主体的に学校を利用して狙い通りのメリットを得るという意味では成功しているのです。僕にしてみれば、主体性もなくなんとなく声優学校や養成所に来て教えを乞うよりは、ずっと有意義な学校の使い方だと思えます。

 僕がみなさんに理解していただきたいのは、主体性と具体的な目的があって学校に通うなら意味があり得るし、そこに通えば「教えてもらえる」「声優になれる」などといった受け身の態度であれば、どこの学校に行っても無意味だということです。特に今そういった学校に身を置いている人はこのことをしっかりと意識し、環境をどう活かすべきかを考え、可能な限り早く実行に移すべきです。

【前編を読む】2019年以降新人声優のデビューはほぼ「0」…それでも声優専門学校に生徒が集まり続ける“奇妙なワケ”

この記事の写真(2枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z