1966年(95分)/東宝/4400円(税込/正・続2枚組)

 前回述べた「釣りバカ日誌」シリーズといえば、ハマちゃん&スーさんのコンビも魅力的なのだが、それだけでない。加藤武、前田武彦、笹野高史、園田裕久、戸川純といったバラエティーに富んだ面々が演じる鈴木建設の社員たちがクセモノ揃いで、作品をさらに賑やかに盛り上げていた。

「釣りバカ」は松竹の人気シリーズだったが、ベースになっているのは一九五〇、六〇年代に東宝の大看板だった「社長」シリーズ。社長、社員、その周辺、余すことなく個性的なキャラクターが配置され、「会社」が実に楽しげな空間として映し出されているのは、かなり強く「釣りバカ」に通じるものがある。

 が、その賑やかさは「社長」が圧倒的だ。森繁久彌の社長を筆頭に、加東大介の重役、三木のり平の営業部長、小林桂樹の社長秘書とその恋人(妻)の司葉子、久慈あさみの社長夫人、新珠三千代、池内淳子らの「夜の女」たち、そして毎回謎の男として出てくるフランキー堺。錚々たる芸達者たちがそれぞれに目いっぱいのコミカルな芝居を繰り広げ、津々浦々で大騒動を巻き起こすのだから、毎回がお祭り騒ぎともいえる賑やかさだ。

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 今回取り上げるシリーズ第二十四作『社長行状記』も、そんな魅力を味わえる一本だ。

 会社の設定は二作ごとに変わるのだが、本作の舞台は「栗原サンライズ」。紳士服専門のアパレルメーカーだ。

 今回の目的はフランスにある有名ブランドの日本支配人・安中(あんなか)を接待して、業務提携に繋げること。安中を演じるフランキーがとにかくおかしい。フランス語と日本語が妙に混じった口調、ナヨナヨした動き、極端なボディタッチ――。その一挙一動が厭らしいまでに怪しげな誇張をした「フランスかぶれ」なのだ。しかも「病的なまでの女好き」と社長に言われるほど、目にする女性に片っ端から親しく声をかけまくっていく。

 そんなフランキーと森繁が絡むと、互いの名刺交換だけで小芝居の応酬により爆笑もの。洒脱な安中に反発する堅物秘書とのコントラストもこのシリーズならでは。サービス精神旺盛な営業部長のフットワークも見事だ。

 さらに社長たちは旅館で宴会芸も披露。ビートルズの扮装、ほうきをギターに見立て、なぜか草津節に合わせてハッスルに動きまくる。

 何より驚かされるのは、物語の大半が「安中とブランド社長夫妻を接待する」、たったそれだけということだ。にもかかわらず、長い時間を飽きずに楽しむことができる。いかに個々の芝居が充実しているか、よく分かる。

 名優たちの賑やかな名人芸に浸り、スカッとしてほしい。

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