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 さて、女性比率を上げにくいもう一つの理由として指摘されたのが、男性が経験することはない妊娠、出産による任務への影響です。

「今後、女性自衛官が増えて、育児などで『時間に制約のある隊員が増えていきます』と言われるようになります。しかし、部隊行動をとらなくてはならないときに、それを乱すというか、今まで念頭に置いてはいなかった例外的な存在を飲み込んでいかなくてはならない。人員に余裕のある部隊であれば良いかもしれませんが、女性がどんどん増えてくると、いずれ特別扱いはできなくなりますよね。仮に女性が増えすぎると、部隊としてやらなくてはならない任務がある中で、少なくない影響が出てくると思います。女性を増やしすぎると逆に女性が大変になると思います」

 陸・海・空自衛隊には多様な職種・職域があり、その中には女性比率が高くなったとしても滞りなく任務を全うできる業務もあるという意見もあります。しかし、妊娠、出産は一時的なものであるにせよ、部隊の中で女性の人数が一定のボーダーラインを超えた際に、そのための人員の確保や、妊娠等への配慮が組織にとっては無視できない負荷となってしまうのではないか、と女性自衛官も懸念しているのです。

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少数派への視線

 それでは、男性が大多数の組織の中で、女性自衛官はどのようにみられ、どのような役割を期待されてきたのでしょうか。

 マジョリティに対して少数派がどのような状況に置かれるのかについて、「トークン(象徴)」という概念で鮮やかに説明をしたのが、ハーバードビジネススクール教授のロザベス・モス・カンターです。

 彼女は、男女の数に極端な不均衡があり女性が超少数派(2割程度まで)であると、超少数派の女性は個人として扱われずに、女性を代表する「トークン」として扱われ、注目されたり(可視化)、多数派に合わせることで目立たないようにする行動に出たり(同化)というような状況に置かれて能力発揮が阻害されるとしています。

 女性の比率が3割を超えるようになると超少数派から少数派となり「トークン」として扱われなくなると言うのです。自衛隊における女性自衛官は、現状では「超少数派」です。

「私が部隊に配属された当時、『大丈夫かこいつ』という風な目で見られるようなところはありました。私の職種は女性隊員が少なかったので、一緒に仕事をする人たちの『本当に女性に任務を任せて大丈夫なのか』という懸念の目があって。

 でも、半年もしないうちにお互いに打ち解けました。信頼関係が生まれれば周りは認めてくれるし、その後も特に困ったことはありませんでしたね。でも、そこに行きつくまでの過程では、私の職種は本当に男の世界で、何人かいた女性の一人が退職してしまい、女性はどうせ辞めるだろうという目で見られていました」