圧倒的に男性が多い環境で、性別を理由にしたレッテル貼りが行われることも珍しくなかった女性自衛官という立場。社会全体がジェンダー平等を目指すなかで、彼女たちはどのような思いを持っているのだろうか。
ここでは、防衛省職員の上野友子氏と法政大学キャリアデザイン学部教授の武石恵美子氏の共著『女性自衛官 キャリア、自分らしさと任務遂行』(光文社新書)の一部を抜粋。子育て中の女性幹部自衛官たちへのインタビューを通じ、国、そして家族を守る彼女たちの本音に迫る。(全2回の1回目/後編を読む)
※記事中の「」はインタビューに答える女性自衛官たちの語り
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男性中心の組織が続くのか
自衛隊は、全体における女性比率が1割に満たず、圧倒的に男性優位の職場です。女性比率は上昇しているとはいえ、自衛隊が男女半々の組織になることはこの先しばらくは考えにくいでしょう。その理由は、自衛隊は「戦闘」の可能性を常に視野に入れておく必要があり、この点を慎重に考えなくてはならないからです。
「女性は戦うことはあまり向いていないのではないかと思います。真に戦うだけであれば、戦闘というものは男性という性の方が向いているのかなと思うのです」
「女性隊員の割合が増えた場合、女性一人では重さ、速さといった面でクリアできない部分もあり、男性がフォローで入るとなった場合、そこに関わる兵力でみると本末転倒です。例えば、器材など重いものを運ぶときなど、男性一人の方が早く済むということはあって、同じように女性一人では難しいので、誰か一人を追加してしまうと、結果的に兵力を二つ使うということになります。こういった側面があることも整理した上で、(女性を)配置していく、増やしていくという思考が必要だと思います」
これらの発言は多くの女性から共通して出てくる言葉でした。「男性を前提とした戦い方を変えるべき」という将来を見据えた意見もあり、技術の進歩によっては戦い方が変化することも予想できます。しかし、「戦闘組織」という側面を持つ自衛隊において、女性が組織の半分を占める存在になることは考えにくいという意見が多数を占めています。
この点に関しては、今後も自衛隊として丁寧に議論を重ねていく必要があるでしょう。女性自衛官自身が、「何が国民、国家のためになるのか」という観点で、自衛隊組織における自らの存在意義について考えています。