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「まりなの殺害」という事態の収拾を図るべく、しずかは現場を目撃した東を取り込み、証拠の隠滅と事件の隠ぺいを図ることに。その際にしずかは、「東くんしかいないの 助けて」と涙ながらに懇願するなど、相手(特に男性)を虜にする魔性の魅力を振りまくのだ。その後も、しずかが東やタコピーを“操作”して自分に都合のいいように利用していく展開が描かれ、第1話で描かれた「かわいそうな少女」のイメージは完全に書き換えられる。

 つまり、しずかは自身のストロングポイントを(恐らく意識的に)把握しており、それが“効く”相手に対してはめっぽう強い人物だったということ。第1話でタコピーに好意を抱かせるなど伏線が張られていたが、第5話以降はボディタッチや上目遣い、笑顔を振りまくといったテクニックを投入しまくり、本領発揮と言わんばかりにアクセル全開になっていく。

 優秀な兄へのコンプレックスで悩む東を焚きつけて罪を擦り付けようとしたり、まりなに変身して周囲を欺くタコピーをアゴで使ったりと、完全に手が付けられない存在に変貌してしまうのだ。

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『聲の形』や『3月のライオン』でもいじめの被害者と加害者の関係が描かれている。

 いじめの被害者と加害者を描く物語といえば『聲の形』や『3月のライオン』などがあるが、前者は贖罪と相互理解、後者は声を上げることの重要性と難しさを描いており(いじめの被害者が教師に「許さなくてもいい?」と言うシーンは痛切だ)、やや乱暴な意見ではあるが、そこに何かしらの光を見出そうとするものともいえる。

 しかし『タコピーの原罪』においては、加害者も別の方向から見れば被害者であり、被害者も加害者になりうる、というシビアな目線が貫かれており、キャラクターに救いを求める読者の心理を破壊してしまう。

 この容赦のなさは、例えば『呪術廻戦』の「自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」といったシビアな問いかけや、『憂国のモリアーティ』における「弱者への施しが必ずしも犯罪の抑制にはつながらない」という残酷な真理のような「現実をベースにした思考」とも価値観を共有しつつ、「人間は多面的なものであり、一概に正邪で括れない」といったメッセージを強く感じさせる。