“救いがない”強烈な物語 漫画『タコピーの原罪』とは
毎週金曜日になると、日付が変わった直後から日中にかけてTwitterにトレンド入りする人気漫画がある。2022年3月4日に上巻が発売された『タコピーの原罪』(著:タイザン5)だ。
『SPY×FAMILY』や『地獄楽』『ダンダダン』といった人気作を次々と輩出してきた漫画アプリ「少年ジャンプ+」にて、2021年の12月から連載開始された本作。開始直後より「悪夢版ドラえもん」「救いはないのか」といった感想コメントが入り乱れ、話題を集めていたが、ここに来てより読者層が広がり、人気に拍車がかかってきた印象だ。
『タコピーの原罪』は、いじめられっ子の女子小学生・しずかのもとに宇宙人タコピーがやってきたことから始まる。地球にハッピーを広めることを目的とするタコピーは、笑わないしずかを幸せにするために様々な“秘密道具”を使って奮闘するのだが……。というものが簡単なあらすじ。なるほど、主人公の名前も相まって、『ドラえもん』と通じる部分も多い。
ただ、「救いのなさ」が特徴である本作は、テイストが『ドラえもん』とは大いに異なる。キュートな絵柄と残酷な物語のギャップの代表格といえば『魔法少女まどか☆マギカ』や、近年では『オッドタクシー』もその系譜にあるかもしれないが、『タコピーの原罪』は冒頭から容赦ない展開のオンパレードだ(「原罪」というタイトルで不穏さを匂わせる演出も上手い)。
※以下では、『タコピーの原罪』上巻の内容に触れています。
牧歌的なタコピーとの対比で人間のエグさが際立つ第1話
タコピーが出会った小学4年生のしずかは同級生のまりなを中心にしたグループから目をそむけたくなるほど陰湿ないじめを受けており、父親はしずかと母親を捨てて東京へ行ってしまったため生活は裕福とは程遠い。
ランドセルに「クズ」「汚物女」「寄生虫」「死ね」といったおぞましい落書きがなされているシーン然り、人間についての知識が少ないタコピーにはわからないが、読者にはしずかが生きる日常の異常性がありありと伝わってくるというエグさは、実に風刺が効いている。