――(笑)。
上沼 テレビ出て稼いでこいというんじゃなくて、人にはわかりやすくしゃべれと。自分だけわかってちょっと酔ってるところがあるのでね。男の人って省略して、教養にものをいわせて答えていることが多いから。ただそれは教養とは呼ばないんじゃないかと私は思いますね。無器用というんですね、私に言わせると。
――自分のことは二の次にして家族のために忙しく働いて、その割には特に感謝もされない、そういう主婦の方々がテレビやラジオ、YouTubeで上沼さんがしゃべっているのを観たり聴いたりして溜飲を下げる。
上沼 「それよ、それよ」っていう。その人たちがファンです。そこがもう嬉しくてね。自分はファンを得ようと思ってやってるわけじゃないですが。
与えられた「主婦タレント」という肩書き
――結婚されて、復帰されて、主婦という肩書きで上沼さんは活躍されましたが、当時「主婦タレント」という言葉もなかったですよね。
上沼 結婚されていた方はたくさんいましたけど、主婦タレントという肩書きの方は少なかったですね。あれはね、NHKの『バラエティー生活笑百科』に出たとき、「浪花のヤング主婦代表」って台本に書いてあったんですよ。
私が40過ぎても司会の(笑福亭)仁鶴さんがずーっと「浪花のヤング主婦代表」と言ってたので、ものすごくクレームがきたらしいです。それで途中から変わったんです、「なんとか七色、上沼恵美子さんです」になりました。
――人生バラ色、おしゃべり七色ですよね。
上沼 そうです。私も「浪花のヤング主婦代表」は嫌だったんですけど、もう記号みたいに聞いてたんで、いまさら「ヤングちゃうやろ」すら思わなかった。だからその“主婦タレント”というのはNHKがつけたんですよね。まあ、肩書きなんてなんでもいいんです。
――私は若い頃『生活笑百科』の上沼さんを見て「主婦っておもしろいな」と思いました。まだまだ「女はつまらない」、「結婚した女はもっとつまらない」と思われていた時代だったと思います。
上沼 そうですね……つまんなくなるかもわからない。まず「女」じゃなくなりますよね。そうね、それ本当に思います。
でも主婦は楽しいですよ。こんな面白いことないです。娘から女になって、それで嫁になって、母になって。いっぱい肩書きが変わっていって。それで今、私は姑の年齢になるわけですけれどもね。名刺を刷るとしたらその肩書きはどんどん変わる。それって楽しくないですか、バラエティに富んでて。
――たしかに今までと同じものを見ても、昔とは見え方が全く違う面白さはあります。
上沼 そうです。「また昔みたいに文化講演会やったらどうだ、姑の立場で」なんてうちの旦那が言うんですよ。でもね、私、めっちゃくちゃいい姑なんですよ。ホテルで会って、ホテルで別れるんです。
――島津ゆたか的です。
上沼 息子夫婦がやってきたら、リッツっていういいホテルに泊めて、そこの中のレストランでご飯食べて、お小遣いドッカーンとあげて。食事終わって9時にレストランで別れるんですよ。私が客観的に「上沼恵美子」を見たら「嫁さん大変やろうな」って言いたいところですが、イメージとは違うことやってるからつまんないんですよ。