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「ありがとね。ええ女房をもろうた」返事すらできなくなった認知症の母を支え続けた90代父に学んだ“老老介護の先にあるもの”

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101歳になった良則さんは現在「営業マン」に

 現在、101歳になった良則さんは、今、娘の映画のチラシを載せた手押し車で「営業マン」として、近所をまわっている。前作ですっかり有名人になり、町を歩けば「お父さん」と声をかけられ、誕生日には全国のファンからプレゼントが届いたりするという。99歳で恋女房を亡くしたが、映画の終盤で念願だったファミレスのハンバーグをペロリと平らげて「うまかった」と屈託なく笑う顔には、「人間ってすごい」という思いにさせられる。

ファミレスのハンバーグをペロリと平らげた

 試写室では、あちこちからすすり泣きの声が聞こえてきたが、前作に負けないほどの温かい笑いにも満ちていた。

「私もいつかぼける日が来るかもしれない。そしたら、それを映画にしたいんです。認知症になった本人が自撮りする映画というのは見たことないですから、思いついた時はワクワクしました。私が撮れるところまで撮ったら、あとは信頼するスタッフがまとめてくれるそうです(笑)。 そのとき、この物語は、本当に完結するのかもしれません」

〔3月25日より全国順次公開〕

のぶともなおこ/1961年広島県呉市生まれ。東京大学文学部卒業。2009年、自身の乳がん闘病を記録した『おっぱいと東京タワー~私の乳がん日記~』でニューヨークフェスティバル銀賞、ギャラクシー賞奨励賞。2010年、独立してフリーに。映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』で文化庁映画賞・文化記録映画大賞。書籍『ぼけますから、よろしくお願いします。』(新潮社)は新潮ドキュメント賞候補になり、その続編『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえりお母さん』は発売前重版がかかった。

「ありがとね。ええ女房をもろうた」返事すらできなくなった認知症の母を支え続けた90代父に学んだ“老老介護の先にあるもの”

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