6年ぶりに内部に潜入!
そして、関係者に確認を取ったうえで、特別に内部を見せてもらえることになった。もちろん、柵を傷つけたりせず、原状を維持して入る方法を検討した。誰にも迷惑をかけないよう、自分自身の安全にも最大限注意を払った。
ウエーダーにヘルメットという格好で6年ぶりに入坑すると、そこには驚くほど当時と変わらない光景が広がっていた。
洞窟に吊り下げられた七夕飾り、飲食用のテーブル、そして鳥居まで、当時と同じ姿のまま、そこにあった。洞窟内にあったため風雨に晒されず、通年で気温も一定だったためか、七夕飾りは全く色褪せていなかった。なんなら、すぐにでも洞窟夏祭りを再開できそうな雰囲気だ。
そういえば、当時から夏祭りであって七夕祭りではないのに、なぜ七夕飾りが施されているのか気になっていた。飾りの中には“七夕祭り”と書かれているものもあって、洞窟夏祭りと一致しない。この疑問を林さんに投げかけたところ、意外な答えが返ってきた。
岐阜県と隣接する愛知県一宮市では、例年、盛大に七夕祭りが行われている。この愛知県一宮市の七夕祭りで要らなくなったお飾りをもらってきたのだという。お下がりだけど、無いよりもあったほうが気持ちも盛り上がるだろう、という理由だった。
時が止まっているような景色
喧騒がない静まり返った坑内を歩いていると、“わなげ200円”と書かれた当時のポップさえも残っていた。近くには衣装ケースが置かれ、輪投げの輪っかが整然と収められていた。次の年にはまた開催されるような状態で時が止まっているみたいで、出入口が溶接までされていることとのギャップを感じた。
鳥居の周辺からは、紅白の幕や賽銭箱が撤去されていた。そして、意外な事実を知ることとなった。鳥居のすぐ先は水没していたのだ。当時、鳥居の奥は紅白の幕で隠されていたが、あれは水没していたためだと知ることができた。水没した坑道の先に鳥居があるという、あり得ない不思議なシチュエーションだ。
念願だった洞窟夏祭り会場の再訪が叶ったが、確認しておきたいことが2つあった。1つは、そもそもなぜ坑道内で夏祭りを行おうと思ったのかということだ。山の上にある神社の境内は非常に手狭で、洞窟前の広場も決して広くない。そのため、空間の確保が理由かと思っていたが、林さんの答えは意外なものだった。「そんなの涼しいからですよ。だって、外は暑いじゃないですか」