「てるてる坊主みたいなヤツだから」
柳本は、あいつはてるてる坊主みたいなヤツだからと大笑いしたことがある。
「木村は、チームが天気になることしか考えていない。チームが天気になるためにおるのです。でも、てるてる坊主を吊したからって、誰も必ず天気になるとは思わないやん。だけど、てるてる坊主に願かけをしたくなる時ってあるでしょ。希望的観測も生まれたりするし。そこが木村のいいところ」
確かに、緊迫した日々の中で、木村の“放言”はメンバーの笑いを誘い、緊張を解かせた。
大会直前に緊急招集されたばかりの頃、あどけない顔でこんなことを口にした。
「ワールドカップとオリンピックって、どう違うんですか?」
女子バレーが最後に出場したアトランタ五輪のとき、木村はまだ9歳。五輪を至上とするアスリートの精神を知るチャンスがないまま、いきなり全日本に招集されてしまったのだ。シドニー五輪不出場は、こんな世代にも影響していた。
しかし木村は、先輩たちに笑われている理由が分からない。
「みんなに“天然”といわれるんです。普通に話していても笑われるので、『なんで笑っているんですか』と聞くと、もっと笑われる」
そんな木村が後に、世界のキムラとして羽ばたき、女子の団体競技では日本人初の1億円プレイヤーになるとは、当時は想像すら出来なかった。
木村がデビュー戦を飾ったエジプト戦は大差で勝った。