お茶の間から忘れ去られていた“はずの”女子バレー
実力に勝るイタリア、米国、ブラジル、中国に敗れ、7勝4敗の5位でアテネ五輪の出場切符は手に出来なかったものの、これまでの女子バレーとはコートから伝わってくる波動が明らかに別物だった。2セットを先取されると簡単に第3セットを献上していた選手たちが、フルセットにもつれ込んでも勝利を譲らなかった。
その真骨頂がキューバ戦である。キューバはワールドカップ4連覇中の強豪だった。そのプライドをむき出しにし、易々と日本をひねり潰そうとした。しかし吉原の闘争心が注入された日本は、パワーとうまさを兼ね備えた難攻不落のキューバを、3−2で遂に退散させたのである。
どんな困難にも立ち向かう諦めない精神と、1ミリの隙もみせないコートの絆が、日本中の心を動かした。テレビの視聴率は、さらに試合を重ねるごとに上昇。トルコ戦が23.1%、ドミニカ戦21.8%、ポーランド戦23.9%、ブラジル戦25.1%、キューバ戦は26.5%、中国戦は26.9%と、バレー中継では近年にない高視聴率を挙げた。
お茶の間から忘れ去られていた女子バレー人気を、彼女たちは一挙に引き戻した。11年夏に日本中が熱狂したワールドカップ女子サッカーの“なでしこ旋風”には及ばないものの、それに近いフィーバーを巻き起こしたのである。
この勢いを04年5月に行われるアテネ五輪の世界最終予選に繫げたいと考えた柳本は、2月末に組み合わせの抽選会が行われ、初戦がイタリアに決まったとき、それに勝てるようなチームを再編成しようと思った。