物価の上昇も起きている。
ロシア経済発展省の発表によると、3月25日時点のインフレ率は前年比15.7%ほど。モスクワで毎日買い物している者の肌感覚としても、全体的に10~15%ほど上昇したように感じている。食品ではトマトとバナナの値上がりが際立っている。ちなみに、先のクリミア併合の際のインフレ率は最大で15.6%であった。
インフレ率15.7%でもロシア国民は「慣れている」
もともとロシアのインフレ率は高めで、侵攻前の1月の段階ですでに8.7%、2月には9.2%であった。率直な反応としては「また上がったか」というものだ。振り返れば1998年、2008年、2014年とロシアは何度となく経済危機に瀕しては、そのたびにどうにかこうにか乗り越えてきた過去がある。国民は、いい意味でも悪い意味でも、慣れてしまっている。
下落するルーブルを車や宝飾品など物に換えるのはもはや手慣れたものだし、知り合いには、株価が暴落するや、石油大手ロスネフチの株を底値で仕込んだしたたかな者もいる。
店内に目を向けても、ソ連末期のように商品棚がまったくの空ということはない。野菜や果物、精肉・加工肉、乳製品などのコーナーはこれまで通りの品揃えである。
一部の品物が入手困難になっているが、これは物価上昇への危機感から来る買い占めによるところが大きい。人々が小麦粉やパスタ類など長期保存が可能な品物を備蓄し始めたからだ。「お一人様3点まで」などと購入制限を設けている店もある。
穀物・砂糖の国外への輸出を制限すると発表
パンと並ぶ主食とも言えるロシア人の毎日の糧、グレーチカ(蕎麦の実)や砂糖はほとんど買えない状態が続いている。生理用品も品薄状態が続いている。しかし、市内のどこかしらに入荷はしているので、何店舗か回って運が良ければ買い占めを免れた商品にありつける。日本であったトイレットペーパーの買い占めと同じような状況だ。
事態を受けて、ロシア政府は3月14日、小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシなどの穀物は6月30日まで、砂糖は8月31日まで国外への輸出を制限すると発表。国内には十分な在庫があり、品不足は買い占めによる人為的なものだと説明した。