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プーチン大統領は知っている《対ロシア経済制裁が“無意味”なワケ》 砂糖争奪戦、物価上昇、海外ブランド閉店でも「大丈夫、何とかなるさ」

2022/04/06
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物価上昇を引き起こす「年金生活者のおばあさん方」

 事実、問題を引き起こしているのは年金生活者のおばあさん方で、ペレストロイカ時代から染みついた習性なのだろう。砂糖が入荷したと知るや我先にと売り場になだれ込み、瞬く間に買い占めてしまう。その異様な光景はYouTubeやツイッターに動画が上げられていて、#сахар(砂糖)や#дефицит(不足)などのハッシュタグから見ることができる。

砂糖買占め(SNSより)
砂糖買占め(Twitterより)

 この状況下でロシア人の口から出てくるのは「大丈夫、何とかなるさ(Всё нормально будет)」。ある程度の強がりも含まれるだろうが、経験から来る自信のようなものが感じられる。それは肝が据わっていると言うこともできれば、感覚が麻痺しているとも言える。

ロシア人の危機を救う「ダーチャ文化」

 基本的にロシア人は、こうした困難な事態に直面した場合、(1)代わりの物を見つける、(2)直して使う、(3)自分で作る、で対処しようとする(それでも無理な場合は「(4)あきらめる」もある)。そこはやはりお国柄なのだと思う。編み物をしている女性もいまだに電車で見かけるし、男性はアパートや車の修理など大抵のことは自分でやってしまう。

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ロシア郊外の菜園付き別荘、ダーチャ ©iStock.com

 根底にあるのはソ連時代から続くダーチャ文化だ。ダーチャとは郊外にある菜園付きセカンドハウスのことで、そこで夏の間、野菜や果物を栽培し、冬に備えて保存食を作る。先の砂糖の買い占めが起きた理由も、ジャム作りやコンポート作りに欠かせないからだ。これは半分冗談のような話だが、SNSでは「ニワトリの飼い方」が一時期トレンド入りしていた。今年の夏のロシア人は例年に増して忙しくなりそうだ。