在宅ひとり死、いわゆる“孤独死”は当たり前のものとなった。全国の自治体が対策を練り、厚生労働省もまとめページを用意している。しかし、いまや死に方のひとつのスタンダードと言えるわりに“孤独死に向けた準備の仕方”についてはあまり知られていない。
「孤独死するにしても、なるべく周囲に迷惑をかけることなく、“立つ鳥跡を濁さず”でいたい」と考える人も多いはずだ。さっぱりと逝くためには、生前にどんな準備を進めておくといいのだろうか。
死後の諸々をまとめて任せる“死後事務”サービス
一般社団法人・終活協議会の菊田あや子理事は、『エンジョイ! 終活』(幻冬舎)を著すなど、「終活」の必要性を発信する活動を行っている。菊田理事に孤独死が発生したあとの流れを解説してもらった。
「遺体が発見されたら、まず警察が来ます。遺体の身元がわかり次第、警察は遺族に連絡を入れますが、中には遺体の引取などの後処理を拒否する人もいます。日本では誰かが亡くなったとき、死亡届の提出と火葬が事実上義務付けられています。遺族が処理を担当しない場合は、その自治体の方針に従って遺体は火葬され、無縁仏となります」(菊田理事)
ひとりの人間が亡くなったとき、遺体だけではなく、その人が生前に集めた品々や金銭など細々したものもあとに残る。すぐに遺族が見つかって始末してくれるならスムーズだが、そうでないことも往々にしてある。
法律上、遺品は相続財産に当たる。たとえ亡くなった直後に見つからなかったとしても、絶対に相続人がいないとは限らないため、故人が遺した金品を第三者が勝手に処分すると違法に当たるケースもある。「住居の管理人や市町村が適当に片付けてくれるだろう」と考えるのは楽観視しすぎかもしれない。
エンディングノートの準備
では、生前にどのような準備をしておくといいのか?
「終活協議会でも提供していますが、現代では“死後事務委任契約”というものがあります。契約にもとづき、委任者は死亡届の提出、年金の停止手続き、保険証の返還、電気・水道・ガスの終了手続き、携帯電話などの契約解除、家賃・医療費・入院費・福祉施設利用料など各種清算手続きを行います。
頼れる親族がいない方や親族になるべく迷惑をかけたくない方は、検討してみてもいいかもしれません」(同前)
どれだけの量の手続きを任せるかによって価格は変わるが、死後事務委任契約には数十万円、時には100万円以上の費用がかかる。いくら「立つ鳥跡を濁さず」を希望していても、気軽に支払うことができる金額ではない。そこで有効なのがエンディングノートだ。