2022年現在、世界でもっとも人気のオンラインRPGゲームのひとつに成長した「ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)」。
全世界での登録アカウント数は累計2500万を超え、ゲーム界のアカデミー賞と言われるD.I.C.E.Awardなどあらゆるゲーム賞を総なめにしているモンスタータイトルだ。
しかしスクウェア・エニックスが2010年9月にFF14を発売したとき、その評判は「ゲームとして成立していない」と言われるほど低いものだった。使いまわしと呼ばれたマップ、爽快感のないバトル、使いにくいUIなど問題が山積。
しかも当時の日本では、オンラインRPGに対して「時間がかかる、お金がかかる、人間関係がめんどうくさい」というマイナスのイメージが定着していた。
そんなFF14発売から約2カ月後の炎上まっただなかに、FF14のプロデューサー兼ディレクターに就任したのが吉田直樹氏だ。そして「すでに発売されている旧FF14とは全く違うオンラインRPGをイチから作り直す」という決断を下すと、2011年10月に「新生エオルゼア」の制作を公に発表、2013年8月には「新生FF14」を発売した。それから9年間の歳月をかけて、吉田氏はFF14を世界最大のオンラインRPGに育て上げてきた。
炎上中のFF14という火中の栗を拾い、日本では下火になりつつあったオンラインRPGという文化まで完全復活させた吉田氏にその道のりを聞いた。
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――今日はお時間いただきありがとうございます。昨年12月に発売された拡張パッケージも大好評とお聞きしています。
吉田「ありがとうございます、こちらこそよろしくお願いします」
――個人的にも10年以上MMORPG(大人数が同時にプレイするオンラインRPG)をプレイしてきたのですが、「APEX Legends」のようなシューティングやスマートフォンのゲームが流行る中で、“重い”ジャンルであるMMORPGがこんなにも勢いを取り戻すとは思っていませんでした。
吉田 FF14の成長はまさにその、「MMORPGは時間もお金もかかるし、人間関係がめんどうだ」というイメージとの戦いの結果でもあると思っています。僕自身はご質問にあったような“重たい”ゲームも大好きで、2000年代には会社のパソコンの隣に、自作のゲーム用パソコンを並べて横目で見ながら仕事をするようなタイプの人間でした(笑)。だから“重いMMORPG”の楽しさもよく知っています。一方で、そのイメージのせいでMMORPGを敬遠する人が大勢いたのも知っており、旧FF14のローンチから”新生”するにあたり、多くの人に触ってもらうには、そのイメージを覆すものである必要がある、と考えました。FF14はカジュアルに遊べることをとても大事にしてきましたし、「いつものFFと変わらないですよ」ということを地道にお伝えしてきました。それがプレイヤーのみなさん、光の戦士たちの間にも伝播し、ここ数年は本当に人が人を呼ぶ状態になってきたと感じています。