――たしかに英雄とは呼べない状態になってしまいますね(笑)。FF14ではストーリーを進めるためにのパーティを自動でマッチングしてくれるシステムもあって快適で驚いたのですが、ゲーム内で知り合いを作らなくてもいい分、MMORPGの大きな要素である「他のプレイヤーとの交流」のハードルが少し高いようにも感じました。そこはどう解決されているんでしょう?
吉田 何よりFF14の良いところは、他人と繋がりたくないのであれば無理にそれをしなくてもいい、というところ。そして、思った以上に“ゆるくつながれる”ところです。他の人と交流したいな、と思えば、パーティ募集に入ってみたり、フリーカンパニーの勧誘に乗っかってみるなどの方法がありますね。いずれにせよ、「自分自身がどう思うか」が行動のきっかけになるようデザインされており、「知らないうちに仲良くなっていた」は、確かに起こりにくいかもしれません。これは最初に挙げた「繋がりたくなければ、無理にそれをしなくてもいい」に起因しています。それでも、ざっくり7~8割くらいのプレイヤーは、ゲーム内で何らかのコミュニティに入っています。新たにゲームをはじめたばかりのプレイヤーは、キャラクターの頭上に若葉マークがつくようになっています。それを見たベテランプレイヤーたちが、彼らに声をかけたり優しくしてくれるので、その中でフレンドができていくことも多いのが最近の流れです。
「メタバースにエンタメ性はあまり関係がない」
――それもコミュニティの力なのですね。
吉田 よく話すフレンドが2~3人いて、たまに一緒に遊んであとはチャットで喋る、というようなプレイヤーが一番多いかもしれませんね。FF14で出会って結婚したというご報告も年々増えており、これまでに祝電を送らせていただいたカップルだけでも、たぶん100組を軽く超えていると思います。もちろん1人でストーリーを楽しんでいただくのも大歓迎ですし、好みに応じて、人との距離感は調整できる状態になっていると思います。
――最近流行っているメタバースという言葉を聞くと「ゲームの中で現実世界とは別の人間関係を作って生きるのは、オンラインRPGプレイヤーが20年前からやってきたことだよなぁ」と思ったりもするのですが、FF14というまさに“別の世界”を作り続けてきた吉田さんから見て、メタバースという言葉の流行はどんな風に見てらっしゃいますか?
吉田 率直に申しますと、どうとも思ってないです。すみません。僕にとってメタバースというのは、遊びではなく、”現実をデジタル世界に置き換えたシステムそのもの”というイメージです。そのため、メタバースにエンタメ性はあまり関係がないと思っているのです。結果、FF14と距離が近いものという認識もないため、意見がないのです。僕の考えているメタバースでは、デジタル現実の中でアバターを使い、現実世界と同じように新宿を散歩したり買い物ができたりするもの。そこに楽しさはあっても、エンタメ性はありません。現実世界のシステム自体は、そんなに面白いものでしたっけ? という感覚なのです。だから僕が今後関わるとすれば、メタバースそのものを作ることではなくて、デジタル現実の中で遊ぶ、面白いエンタメコンテンツを作る、という方向になるかと思います。まだあくまでイメージのお話しですけどね……。