1975年(78分)/東映/4950円(税込)

 一九七〇年代の前半に流行した劇画原作映画は、かつては「子連れ狼」シリーズや「女囚さそり」シリーズなどの一部の大ヒット作くらいしかDVDで手軽に観る機会はなかった。が、ここにきて、前回まで述べてきた東宝がそうであるように、次々とソフト化や配信化が進んでいる。

 今回取り上げる『若い貴族たち 13階段のマキ』も、そうした一本だ。なかなかソフト化されないできたが、東映ビデオの「The大井武蔵野館セレクション」企画でついにDVD化され、プライムビデオでも配信されている。

 これは原作が作・梶原一騎、画・佐藤まさあき、制作が東映東京撮影所と、バイオレンス映画には最高の座組。それだけに、どこか緩さのあった東宝作品とは異なる、血なまぐさい暴力性に貫かれている。タイトル通り「十三階段」の異名を持つマキ(志穂美悦子)の活躍が描かれた物語だ。

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 内藤誠監督の演出は、上映開始から数秒で早くも快調にスパートしている。仲間のピンチに、白いコートをなびかせて現れる、マキの颯爽とした登場シーンに始まり、「13」と大きくプリントされたシャツを見せつつの、四肢を伸びやかに使った格闘、そのバックに流れる「ひっぱたかれたら蹴とばすまでよ」と志穂美の不安定な歌声による主題歌、ストリップ小屋の舞台上で客を前にしながらのヤクザとの乱闘、空手着を着ての裸足でのランニング、ヤクザの用心棒で喧嘩空手の達人(南城竜也)との決闘、ヤクザ相手のヌンチャク戦――と、ここまででなんと、スタートからわずか十分。いきなり見せ場を詰め込みまくっていて、一気に引きこまれる。

 その後も、少年院に収容されてからの決闘の連続と脱走劇、そして赤いWヌンチャクを使ってのラストのアクションに至るまで、ひたすら活劇が続く。体感としては、上映時間の八割くらいがアクションかバイオレンスの場面に思えるほどだった。

 東映作品だけに、悪役陣も充実している。とにかく憎々しい名和宏、黒幕と思わせて名和につけこまれる近藤宏、見るからに胡散臭い洋装をした内田勝正、キザで厭らしい室田日出男、名和の背後に無言で控えているだけで怖い――と見せかけてヌンチャク一撃で倒れる藤山浩二、突如として現れて場を圧倒する最強の刺客・佐藤京一。濃厚な面々が存分に魅力を発揮、これが志穂美の凜々しいアクションと絡み合うことで、ほぼノンストップのアクションでも全く飽きが来ない。それどころか、充実した刺激の連続に震えるばかりだ。

 梶原劇画がそのまま飛び出したような、大活劇である。