――私もFF14の中で「自分の力不足でボスに勝てない、足を引っ張ってしまった」という状況に何度か遭遇したのですが、みんな優しく励ましてくれて一度も怒られませんでした。オンラインゲームでは罵声が飛び交うことも多いのですが、FF14のこの温かさはどうやって生まれたのですか?
吉田 プレイヤーコミュニティの温かさは、僕たち開発/運営チームが、本当に誇りに思っている部分です。FF14は非常に大きな失敗からスタートした作品で、僕がプロデューサーに就任して立て直しを始める時から、プレイヤーの皆さんに「一緒にFF14を育てる仲間になってください」というお願いを11年間ずっと続けてきました。最初の頃はもちろん初めての試みですし、オンラインゲーマーなら肌で感じてきたと思うのですが、「開発チームは俺たちの敵だ!」という意識がまだ強かった時代のこと、双方戸惑いが多かったと思います(笑)。でも、そこからずっと「プレイヤーのみなさんも、僕たち開発/運営チームも、同じゲームが良いものであって欲しい、と願う同志です。ぜひ仲良くしてください」とお願いを続けてきました。現在のFF14の周りには、そのメッセージに共感してくださったプレイヤーの方々がたくさんいらっしゃいます。だからこそ新しくFF14の世界を訪れた方に対しても、同志だと感じてくださるのでしょうし、優しくしてあげて一緒に楽しもう、という空気を作ってくださるのだと思っています。たまに他のゲームの運営をしている方に「どうすればいい雰囲気が生まれるのでしょう?」と聞かれることもあるのですが、このコミュニティの空気を作るのは一朝一夕では難しく、常に正直で真摯な関係性を継続する以外に道はない、と思っています。
「自分の分身とも言えるキャラクターが、暴言を吐きまくるのは如何なものか……」
――「人に迷惑をかけるのが怖い」という理由でオンラインゲームを敬遠する人も多いと聞くので、コミュニティの空気はとても重要ですよね。
吉田 その“申し訳なさ”は、どうしても個人の感覚に依るところが大きい。ですが、実際に「そう感じてしまう」人がいることは大きな問題です。だからFF14では、バトルに負けたら二度と手に入らないアイテムや、負けたら何かを失うという場面を極力減らしてゲームデザインしています。興奮やスリルのためにこうしたものが必要な場合もあり、100%無くすべきではないという思いもありますが、そこは匙加減になります。また地味に大きいと感じるのは、FF14は顔や髪型や体型まで細かく設定する、自分で作ったキャラクターを操作して、”英雄”になっていく物語が描かれます。ストーリーの中で英雄になっていく自分の分身とも言えるキャラクターが、暴言を吐きまくるのは如何なものか……と、そういった心理作用もあるかもしれません(笑)。