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2022/05/09

――“驕り”ですか。

吉田 そもそも合併前のスクウェアがどのように成長していったかを聞くと、1つ1つのゲームに会社じゅうの全ての力を結集して、倒産するか飛躍するかという賭けに勝ち続けてきたのだ、という話が多くあります。ある日突然「今日をもって他のゲーム制作をすべて停止して、この1本を全員で完成させるぞ」という号令がかかるような会社だったそうです。僕がファンとして感じた「ファイナルファンタジー」のパワーは、そういうところだったんだな、と思ったものです。もちろん経営という観点からは安定感がなかっただろうな、という思いもあります。その後エニックスとの合併があり、保有するIPの数は増え、開発者の人数も多くなった。結果、同時並行で制作する大型タイトルの数が増えました。人数は増えたのだからできるはずだ、という理屈もあったと思います。ですが、スタッフの人数だけは採用すれば10倍になりますが、世界に通じるゲームを作れるスタッフはそんなに簡単に育つわけがないのです。会社が大きくなったことによって、また専門性が高くなり業務の細分化が進み、みんな特定のスキルが突出し始める。でもゲームをまとめ上げるには、それだけでは足りない。しかしプロジェクト数は増え続けるので対策もできず……といった具合です。

――その問題が、FF14で噴出してしまったのですね。

吉田 だから僕は自分がFF14に関わることになっても、旧FF14のチームだけを責める気には全くなりませんでした。むしろ、社内の人が旧FF14チームを悪く言っていたら猛烈に腹が立つ。たしかにMMORPGというジャンルや新しいテクノロジー、最新のゲームの作り方について、彼らが不勉強だったのは事実だと思います。でも、利益を出さなければならない、永遠に開発は続けられない、発売しなければならない、というプレッシャーも非常に強かったのです。だから旧FF14の失敗は、当時のスクエニという会社全体の失敗だと思うんです。会社の雰囲気が悪い方向に進んでいて、それがたまたまFF14で爆発しただけだと考えています。

 

異例の兼任は「怒りがモチベーションだった」

――悪い方向、とはどういうことでしょう。

吉田 過去の成功体験によって他の作品から学ぼうとする姿勢が減ったり、昔のゲームの作り方を繰り返してしまったりする空気という感じでしょうか。人が増えて組織が縦割りになり、なんとなく「隣は隣、自分は自分」という雰囲気もそうです。仮に旧FF14の失敗がギリギリで防げていたとしても、その後どこかで大きな破綻が起きていただろう、と思っています。だからこそ、社内の人間が他人事のように旧FF14を非難する事に腹が立ったのです。無関心でいた自分も悪かったからこそ、プロデューサー兼ディレクターという異例の兼任を引き受けさせていただきました。怒りがモチベーションだった気がします(笑)。

――そして吉田さんはプロデューサーを引き受けて「すでにサービス開始してしまった旧FF14をアップデートしながら、全く新しい新生FF14をイチから作り直す」という決断をされました。その時にスタッフの数はどのくらい増えたんですか?

吉田 開発時期によってスタッフ数は変わりますが、僕が着任してそれらを決断した当時、スタッフ数は殆ど変わりませんでした。顔ぶれも旧FF14とほぼ一緒です。旧FF14のスタッフ全員の前で「FF14を立て直したいと思います。ほとんどの人が僕と仕事をしたことが無いので不安だと思いますが、3カ月だけ一緒にやってみてほしいです。それで僕ではダメだなと感じたら、チームを抜けていただいても大丈夫です!」と説得しました。結果的にスタッフの9割はそのまま残ってくれることになり、旧FF14のアップデートと新生FF14の開発を並行し、その後は新規採用も含め、徐々にスタッフ数は増えていきました。あれから11年が経ちましたが、今でもFF14チームには旧FF14から関わっているスタッフが数多く在籍してくれていて、とても誇りに思っています。

――スタッフの顔ぶれも人数も変わっていないのに旧FF14から2年半後に発表された新生FF14は、すぐにプレイヤーたちから熱狂的な評価を受けました。旧FF14のスタッフも経歴を見れば本当に優秀な人達が揃っていたと思うのですが、吉田さんにはどんな特殊能力があるのでしょう。

吉田 新生FF14も、やはり初期はコンテンツ不足との戦いの日々でしたし、決して順風満帆とはいえませんでした。努力を継続すること、というのが一番重要なだけだと思います。残念ながら僕はもうすぐ50歳に……なりたくはないけど、なってしまいそうなゲームとゲーム作りが大好きなおじさんでしかなくて、自分では何か特殊な能力があるとはまったく思っていません。むしろ、多くの人の努力が積み重なった結果なんだと思います。

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