経験者だからわかる、「捕手」の喜びと価値
2020年8月27日のソフトバンク戦でサヨナラ勝利を飾った直後の大号泣は、皆さんの記憶にも深く刻まれているはずだ。
あのシーンを見た時に、僕は“打者・森友哉”から“捕手・森友哉”になったと感じた。自分にも悔しくてベンチで泣いた過去があった時のことを思い出してジーンとした。
捕手というポジションは、経験した人にしかわからないものがある。怖くてピッチャーにサインが出せなくなる時だってある。それだけ責任を感じるポジションだ。
しかし、チームが勝利した時は一番喜びを感じられるのもキャッチャーの魅力だ。僕は捕手から外野手にコンバートした経験があるからわかるが、勝った時に一番嬉しいのはキャッチャーだ!
彼もそれはわかっていると思う。
日本ハムの近藤健介選手はもともと捕手だったが、コンバートしてから高い打撃技術で毎年安定した成績を残している。森選手もあの打撃技術があれば、他のポジションでもレギュラーで試合に出られると思うが、今のプロ野球であれほど打てる捕手はいない。
僕がプロに入った時には、同じチームの大先輩に古田敦也さんがいた。他球団にはジャイアンツの阿部慎之助さん、ソフトバンクホークスの城島健司さんなど、打てる捕手が両リーグにいた。
今のプロ野球を見ていると、“捕手・森友哉”に価値があると僕は思う。
元チームメートからのメッセージ
現在のライオンズはなかなか波に乗れない状況ではあるが、森選手、ベテラン捕手の岡田選手がいない中、若手の牧野翔矢選手、柘植世那選手が頑張っている。
僕はヤクルト時代の高卒3年目、絶対的正捕手だった古田さんが怪我をして試合出場のチャンスをもらった時、ビギナーズラックではあったが結果が出て、チームも連勝し、プロでやっていく上で大きな自信になった。
若手には目の色を変えて、レギュラーを奪うくらいの気持ちでプレーしてほしい。それがチームの層の厚さになり、何年後かのライオンズ黄金時代に繋がるだろう!
森選手には、辻監督の「治ったときに、あいつ自身が野球観をしっかり変えて、またチームのために泥だらけになってやってくれることを望むだけ」というコメントにもあった通り、自分を見つめ直し、また新たな気持ちで帰ってきてほしい。
野球を続けていると、必然的にたくさんの失敗をします。その経験からたくさんのことを学び一流、超一流になっていった選手を僕は見てきました。
“失敗は成功のもと”――。
森選手も今回のことから学び、本当の意味で球界を代表するスーパースター捕手になると僕は思います!
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