文春オンライン

《予想外すぎる超展開》「これは弁護になっているのだろうか?」裁判ウォッチャーが見た「ヤバい弁護士」

2022/04/09
note

「被告人には社会内の更生が期待出来ます。私も知人ですのでお願いします」

 そして検察官は、被告人が被害弁償もしておらず反省の態度も見られないとして懲役1年を求刑です。

 この後、弁論。普通は弁護人が前もって書いてきた弁論用紙があって、それを読み上げる為に被告人質問や証拠を提出する訳です。証拠は反省文すら提出してないし、ここまで何の弁護もしてない弁護人がどんな弁論をするつもりなのか?

©iStock.com

 すると、弁論用紙を用意してないのか、はたまた全てを暗記しているのか、弁護人は手ぶらの状態で立ち上がり

ADVERTISEMENT

弁護人「え~、検察官からは罰金刑ではなく懲役刑の求刑がありましたけど、そちらの方が反省も深まります。懲役の方がいいでしょう」

 と、より重い判決にすべきと語り始めたのです。なかなか驚きの弁論。しかしここからはそれっぽく

弁護人「被害者の方針で示談はしておりませんが、被告人としては申し出は行っています。あと建造物損壊とは言いましても、ガラスにひびが入った程度で被害店舗が入っているビル……え~っと、なんとかビルも壊れてはおりません。被告人には社会内の更生が期待出来ます。私も知人ですのでお願いします」

 と締めて執行猶予付きの判決をお願いしていました。最後の方だけ聞くと普通の弁論なんですよね。

被告人の「最後の言葉」に、弁護士は…

裁判官「では被告人、証言台の前に。これで審理を終結して、次回判決を言い渡す事になります。最後に言いたい事があったら述べて下さい」

 と被告人の最終陳述です。ここでは長々と反省の言葉を並べる人もいるんだけど、「特にありません」と何も言わない被告人が多数。何も言わないからダメなんて事は無いし、むしろノーコメントの方が時間が過ぎてる時なんかは有り難がられてる印象です。で、この被告人は何か言うのかと思ったら

被告人「大丈夫です」

 と。するとこれを聞いた弁護人が

弁護人「そこですいませんとか言えよ~」

 といらぬアドバイス。被告人に何か言わないと気が済まないのかも知れませんね。すると

被告人「いろんな人に時間割いてもらって迷惑掛けてるので、反省しています」

 と述べて閉廷でした。

「考えられる?あり得ないよ~」

 1週間後、被告人に判決が言い渡されました。私は他の裁判と時間が被ったので傍聴してませんが、ロビーに弁護人がいて近くの知人らしき人物に

弁護人「考えられる? 自分の判決なのに遅刻してくるんだよ? あり得ないよ~」

 と怒っているのを目撃してしまいました。ここまでやって報酬無しですからね。被告人のキャラクターが弁護人をこうさせたのか、弁護人がいつもこんな弁護をしているのかは分かりませんが、どんな事情にせよ、もし自分が逮捕・起訴された時にこの人だったらイヤだなぁと思ったのでした。

《予想外すぎる超展開》「これは弁護になっているのだろうか?」裁判ウォッチャーが見た「ヤバい弁護士」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー