兵庫県豊岡市にある高齢者支援施設「たじま荘」で「まるこ」という一匹の白い犬が“セラピードッグ”として働きながら暮らしています。
たとえば、入所以来一度も笑わないことで有名だった名物頑固おじいさんは、「いやし犬」とふれあうと次第に笑いを取り戻したといいます。犬が人をセラピーするとは、どういうことなのでしょうか(後編「犬捨て山で生まれた雑種『まるこ』がセラピードッグになるまで」も公開中です)。
◆
山梨県の「犬捨て山」で生まれたまるこ
あやうく殺処分されそうだった犬が救い出されて、特別養護老人ホームで人生の終幕を生きる人に楽しみと張り合いを与えている。兵庫県豊岡市にある高齢者支援施設「たじま荘」へ会いにいくと白い犬が迎えてくれた。
「いやし犬いうても、どっちが癒していて、どっちが癒されているのかわからへんわ~、なあ、まるこ」と職員さんが笑いながらなでている雑種の犬。白い耳は食パンのようだ。まつげまで白い。年は12歳。女の子。ここ「たじま荘」で“セラピードッグ”として働いて10年以上になる。
「この子におやつをあげるのが楽しみでなあ。なあ、まるこ。あんたは手をなめてくれるもんな。それがうれしいんやで」
と利用者は語る。
ときにはまるこがいるロビーに向かって車いすが渋滞するほどだ。生き甲斐を人に与える犬がここにいる。
まるこの生まれは、山梨県の「犬捨て山」。捨て犬とその家族が400頭いた。救出されて、兵庫県伊丹市のNPO法人・日本レスキュー協会へ。
そこで、訓練を受けて、セラピードッグとして兵庫県豊岡市のたじま荘に譲渡された。これが彼女の“人生”。人の手で殺されそうなところだったが、いまや人生の終幕あたりを楽しむ老人をいやす。
なんとも数奇な運命である。
犬がセラピーするとはどういうことか。