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頭の中にある言葉と、口から出てくる言葉がぜんぜん違う…左脳の4分の1が壊死、失語症になった私を待っていた「6カ月の壁」

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2022/04/14
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時計もカレンダーも読めない私の、1日のスケジュール

 でも私にはひとつだけ心配なことがありました。転院にあたって私の最大の希望は「これまで通り週末は自宅に帰りたい」ということだったのですが、そのことが旦那になかなか伝わらなかったのです。繰り返し説明した末に、ようやく理解してくれた旦那が、私の希望を主治医の先生に伝え、許可をもらえた時は、心からホッとしました。

 こうして私の一週間のスケジュールが決まりました。

 月曜日から土曜日の昼までは病院でリハビリ。土曜の昼には旦那が迎えにきてくれるので、週末を自宅で子供たちと過ごすことができます。病院に戻るのは日曜日の夜。自宅からT病院まではクルマで50分ほどの距離なので、ちょうどいい感じです。

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 病院の朝は早く、まだ暗いうちから看護師さんが体温や血圧の測定にやってきます。時計もカレンダーも読めない私に正確な時間はわかりませんが、たぶん午前7時くらいだったと思います。

 私の病室があるのは、西病棟3階にある脳神経内科。病室は4人部屋ですが、ゆったりと窓から木々を見ることができる、素晴らしい環境です。

入院中、貴重品を入れて持ち歩いたバッグ。友人が作ってくれたもの

 主治医の回診の際には、看護師さんが私たちの髪を結び、温かいタオルを渡してくれます。患者の病状はひとりひとりが違うので一概には言えませんが、大体の患者はそのタオルで自分の体を拭きます。私は右手が不自由なので、工夫が必要でした。

 朝食の時間がくると、食堂に移動します。車椅子を自分で漕ぐ人、看護師さんに車椅子を押してもらう人、松葉杖を使う人もいます。私は、右足をうまく動かせないものの、なんとか自分の足で歩いて移動しました。

 みんなで「いただきます」と言って食事が始まります。食事中は、看護師さんとリハビリのお医者さんが私たちを見ていて、手助けをしてくれます。

 右手を動かせない私が左手にスプーンを持ってご飯を食べようとすると、主治医の先生が「お箸は右手で持ちましょう。リハビリすればきっとよくなりますから」と、大きなトレーを持ってきました。トレーに並んでいたのは、リハビリ用のお箸やスプーン。患者の状態によって最適なものが使えるように、様々なものが揃っていました。

 結局、お箸はまだ難しすぎたので、小さなスプーンを右手で持ちました。右手を使うのは、脳梗塞を起こして以来初めてでした。