『藤井聡太論 将棋の未来』(谷川浩司 著)講談社+α新書

 天才は天才を知る。著者は中学生でプロ棋士になり、21歳2カ月の史上最年少で“名人”を獲得。その後も羽生善治九段ら好敵手と争いながら、40年以上現役の棋士として活躍している。その間、日本将棋連盟会長を務め、後進育成や将棋の普及にも尽力してきた。そんな著者が、現代の若き天才として快進撃を続ける藤井聡太五冠を論じた新書が好調だ。

「企画を相談した際、『藤井さんを中心にしつつ、将棋界の現状や未来についても書きたい』と著者からご提案がありました。谷川さんご自身の経験とも重ねながら、精神面、技術面などさまざまな角度から藤井さんの将棋の強さを分析。同時に、5年前AIが現役の名人に完勝して以降、将棋界がそれをどう受け止めてきたのかも描き出しています」(担当編集者の田中浩史さん)

 若い棋士を中心に、現在の棋士はAIとの共存を模索している。競うのではなく、AIを用いて新たな戦術を追求し、さらなる高みを目指す。社会が直面している問題への一つの向き合い方が、将棋を通じて垣間見える。読者層は将棋ファンだけにとどまらず、中にはこんな読み方も。

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「50代、60代の男性読者が、現役として活躍を続ける一方で俯瞰的に自分を見つめ、業界や後進のために何ができるかを考える著者の姿を参考にしているようです」(田中さん)

2021年5月発売。初版1万部。現在8刷5万5000部(電子含む)

藤井聡太論 将棋の未来 (講談社+α新書)

谷川 浩司

講談社

2021年5月21日 発売