火葬場の正しい情報を発信するために『火葬場奇談』を開設
――下駄さんは約1年前にYouTubeチャンネル『火葬場奇談』を開設されましたが、「火葬場業界のことをもっと伝えたい」と思ったのがきっかけなんですよね。
下駄 火葬場の話は、ネット上だとほとんど語られてなかったんですよね。たまに話題にあがっても事実でないことが多かったし。一時期、「火葬中にご遺体が生き返っても火は止めない」という都市伝説が広まって、すごく嫌でした。もしそれが本当だったら、火葬場職員は傷害致死で捕まっちゃいますよ。
あとは、5ちゃんねるで「火葬場職員だけど質問ある?」ってスレッドがたまに立つんです。でも、「この人が話していることは嘘ではないけど、ごく一部の地域だけの風習なんだよな」と思うことも多くて。
僕は10年近く現場で働いて、いろんな地域の火葬場に勤務してきました。だから少しだけ、ほかの人より経験も知識もあります。だったら僕が「火葬場の正しい情報を発信しよう。少しずつでもいいから、知りたい人に対してクローズドな業界のことを伝えていこう」と思ったんです。
――いまではYouTubeの登録者数が6万人を超えています(2022年3月時点)。火葬場業界の情報が伝わっている感覚はありますか。
下駄 少しずつですがありますね。最初は「遺族のために」と思ってチャンネルを立ち上げたんですけど、いまでは現役の火葬場職員さんや葬儀屋さん、納棺師さんたちもめっちゃ見てくれてるんですよ。コメント欄では「私は納棺師なんですけど、棺にこれは入れてもいいですか?」みたいなコミュニケーションも生まれています。
それに僕が動画で情報を発信するだけじゃなく、コメント欄でほかの地域の葬祭業について教えてもらうことも多いです。あとは、火葬場から運用方法の相談をいただくこともありますね。
地域によって存在する『お別れボタン』という儀式
――どんな相談ですか?
下駄 地域によっては、喪主の方に火葬炉のボタンを押していただく「お別れボタン」という儀式があるんですね。遺族の中には、そのボタンを「点火をスタートするボタン」だと思っている方もいて。
でも実際には、火葬炉の裏で火葬場職員が点火しています。その話をYouTubeでしたとき、「『お別れボタン』を押したことあるけど、点火ボタンだと思って気が重かった」っていうコメントをたくさんいただいたんです。