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『ティファニーで朝食を』はアジア人蔑視があるから放送禁止にすべき? 過去の差別表現に“うまく”答えたディズニーの方法

2022/04/13

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 歴史, 映画, 社会

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近年のアメリカのアジア人の表象

 ではアジア人の表象はどう変わり始めたのか、私が好きな『Never Have I Ever』というインド人家族を描くドラマのストーリーをご紹介したいと思います。このドラマは、高校2年生のインド系アメリカ人のデヴィを主人公とするコメディですが、デヴィのお父さんが急死してしまった後のデヴィの高校ライフを描きます。愛するお父さんを亡くしてしまった悲しみを上手く表現できないデヴィがセラピーを受ける姿や、インドから移民した一世のお母さんとアメリカで育ったデヴィの価値観の衝突などのヘビーなテーマも扱いますが、個性的な親友二人との友情や、学年のなかで成績1番を争うライバルとの掛け合いや、憧れの男の子との恋愛の話もあり、面白さと真剣さのバランスが絶妙なドラマです。

 このドラマでは、高校一かっこいい男の子で水泳部のエースという役柄が、Paxton Hall-Yoshidaという日系ハーフだという設定で、またPaxtonの日系アメリカ人の「おじいちゃん」(ドラマ内でも日本語で「おじいちゃん」と呼ぶ)も老人ホームで一番の人気者という設定です。

 Paxtonが学校で「自分の祖先の苦難について調べて発表する」という課題のためにおじいちゃんからもらった物を見ていたら、日系アメリカ人収容所の葉書を見つけます。「おじいちゃん、収容所に入ってたこと、知らなかったよ」とPaxtonがおじいちゃんに話しかけると、「あまり話したいと思う過去じゃないけれど、実際に起きたことだと忘れられないように、自分のような人が次の世代の人たちに話していかなきゃね」という会話になりました。

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 日系の男性が「かっこいい」男性として描かれる機会が今まで少なく、このようなドラマが出てきてくれて良かったと思っています。また、一面的な容姿のかっこよさだけでなく、日系人としてのストーリーラインも入り、それも彼のかっこよさの一部として捉えられる描かれ方に好感を持てました。