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『ティファニーで朝食を』はアジア人蔑視があるから放送禁止にすべき? 過去の差別表現に“うまく”答えたディズニーの方法

2022/04/13

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 歴史, 映画, 社会

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カラフルになり始めているアジア人の表象

 今までのハリウッド映画に描かれるアジア人キャラクターといえば、面白いパンチラインを言うサイドキャラが多かったにもかかわらず、この数年のうちに、キャラクター一人ひとりが深みのある登場人物として描かれ、アジア人の家庭やアジア人同士の友情を描くドラマや映画も増えてきました。

 最近ではポン・ジュノ監督の『パラサイト』がアカデミー作品賞を受賞し、少しずつアジア発の作品の受容にも変化がみられることを感じます。2022年のアカデミー賞には日本映画の『ドライブ・マイ・カー』も外国語映画作品賞を受賞しただけでなく、作品賞にもノミネートされました。アメリカ国内で製作された映画におけるアジア人キャラクターの表象に変化が見られることも前進ですが、韓国や日本発の作品がアメリカで受容されることもまた大きな意義を持っています。

 これまで縛られていた画一的なイメージから解放され、アジア人の表象がカラフルになり始めている。アジア人自身のみならず他人種の人もまたそのカラフルな表象に触れることを通じて、アメリカ社会に生きるアジア人のあり方、人々のアジア人への眼差しも変化していくのだと思います。

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©️iStock.com

 コロナ禍でアジア人に向けられたヘイトに対してStop Asian Hateムーブメントが生まれた背景には、アジア人差別の存在を社会が認識するように社会の側が変化したという背景があります。メディアの中でアジア人の表象が変化したことは、まさにそうした社会の変化の表れであり、それがまた社会の変化を促した。人種やジェンダーロールの表象とはメディアの中にとどまるものではなく、社会を映す鏡であり、そこに映る像が変れば社会にも変化が生まれるエンジンでもあるのです。

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