――確かに、無意識レベルで「サザエさん」の影響を受けていることはありそうです。逆に大人だからこその楽しみ方もあるんですか?
秋葉 僕はサブタイトル収集と一緒に、そのエピソードを作った脚本家のデータもリストに載せています。「サザエさん」制作チームには原作漫画のどのエピソードをピックアップするかを決める文芸というセクションがありますが、その部署だった人がある時から脚本家になっていたりするんです。「この人、部署変わったのかな」と野球選手の移籍を見るような気持ちで、制作チームの内情を想像したりしていますね。
――アニメを調べていくとスタッフにたどりつくとは言いますよね。アニメの内容的には子供向けという性質も強いと思うのですが、秋葉さんが40年以上見続けられているのはどんな面白さを感じているのでしょう。
秋葉 「サザエさん」ってどの年代の人でも感情移入できるキャラがいると思うんですよね。子どもの頃はカツオのことを「こんないたずらを思いつくなんて面白い奴だな」と同年代の友達のような感覚で見ていました。20代になるとマスオさんのサラリーマンとしての苦労とか、父親としてタラちゃんの質問に答え方を悩む姿に自分を重ねていました。「マスオさんの会社、転職先としてアリだな」と羨ましくなったりした時期もありましたね。
「今はもっぱら波平目線で見てしまいます」
――そうすると徐々に波平の気分がわかるようになってきたりするのですか?
秋葉 はい、実は僕にとって昨年は波平と同い年の「波平イヤー」でした(笑)。だからか、今はもっぱら波平目線で見てしまいます。僕に孫はまだいないのですが「孫ってこんなに可愛いものなのかな」とか「ワカメが成人するまであと10年以上あるのか。大変だな……」とリアルに苦労を想像したりしています。
――カツオの年齢から波平の年齢を超えるまで、秋葉さんの人生に「サザエさん」はずっとあったんですね。
秋葉 日曜の夕方に家族で食卓を囲んで「サザエさん」を見る体験は僕にとって幸せなものでした。今は子供も大きくなって付き合ってくれるのは妻だけですが、それでも「サザエさん」の楽しさは全然減っていません。日曜日の終わりを感じて憂鬱になる「サザエさん症候群」なんて言葉がありますが、僕にとっては意味は真逆。サブタイトル収集も、魅力を伝える役に立てばいいなと思います。
――久々に日曜の夕方をテレビの前で過ごしたくなりました。ありがとうございました。