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「お前の体貸せや! さばいて埋めたるわ!」リーゼント刑事VS恐喝男、テレビ史に残る現行犯逮捕の瞬間

『リーゼント刑事 42年間の警察人生全記録』より #1

2022/04/20
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「11時09分、現逮じゃ!!」

 こうして始まった初めての密着取材中、「女性トラブルで暴力団を名乗る男から恐喝されている」という男性被害者が署を訪れた。

 怯える被害者に事情聴取していると、彼の携帯電話に恐喝男から着信があった。電話に出るや否や、「お前の体貸せや! さばいて埋めたるわ!」「500万円用意しろ! 鳴門の海に投げたろか!」と恐喝男が物騒な脅し文句を浴びせかける。ワシは別回線で会話の内容を聞きながらメモにペンを走らせ、被害者にしゃべる内容を指示した。

 狙いは恐喝男を特定の場所に誘い出し、恐喝の現場を押さえることだった。ワシの筆談の指示によって、恐喝男が要求する500万円の受け渡し日時と場所が決まった。あとは周辺に捜査員を配置して、ノコノコと現れる恐喝男の身柄を確保するまでや。

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 作戦決行日、ワシは囮になって恐喝男をおびき寄せる被害者に「安心しておいてください。我々が守っていますから」と声をかけた。

©黒石あみ

 約束の時間になり、各所に配置された捜査員の緊張が一段と高まるなか、ひと目で怪しいとわかる恐喝男が現れた。男はTシャツの腹部に何かを隠し持つような仕草で被害者に近づき、「チャカ(拳銃)持っとんねん」とさらに脅しをかけた。

 被害者に取りつけた秘匿小型無線でその声を聞いたワシは、「ゴー! ゴー! ゴー!」と全捜査員に指示を出して、自らも現場に猛ダッシュした。恐喝男が拳銃を持っていたら被害者が銃撃されるかもしれず、一刻の猶予も許されなかった。

「警察じゃ!」「何がヤクザじゃコラ!」「ナンボ取ろうとしたんじゃ!」

 自身の危険を顧みず、ワシは暴れる恐喝男をボコボコにして取り押さえた。そして男の腕を押さえて手首に思いきり手錠を叩き込み、腕時計を見てこう叫んだ。

「11時09分、現逮じゃ!!」

 恐喝男とのやり取りと張り込みから、現行犯逮捕の瞬間までの一部始終がリアルな映像としてお茶の間に流れた。テレビの警察特番の歴史に残る映像だった。