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「妹の死後、血まみれの人々が鏡に現れて…」 歩道橋からの顔面ダイブも経験した“元AV女優漫画家”が振り返る「統合失調症という病との半生」

『人間仮免中』作者・卯月妙子さんインタビュー#1

2022/04/15

genre : エンタメ, 読書

「中学3年のころ、無為自閉(※引きこもり)の症状が出はじめたんです。ひどい幻覚や幻聴・妄想が始まりました。ある時、家中にある薬を全部飲んで、手首を切って自殺未遂をしたんです」

 最初に自殺未遂をしたときのことを、漫画家・卯月妙子さん(50歳)はこう振り返る。

 小学生のときに統合失調症を発症した。病状は現在まで続き、精神障害2級と認定されている。常に何種類もの薬が手放せず、ときには自傷行為をしたり、寝たきりになるほどの重症に陥ったりすることもあるという。

 そんな中でも卯月さんは自伝的漫画『人間仮免中』『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』などの話題作を発表してきた。中でも2012年に発表した『人間仮免中』は「このマンガがすごい! 2013」でオトコ編の3位に入るなど、大きな反響を呼んだ。

 作中では、 恋人や家族たちとの平和で幸せな日々を描く一方で、心の病に苦しむ姿や、「嫉妬で彼の首を切りつける」「歩道橋から顔面ダイブをする」など、激しい感情の波がもたらした衝撃的な場面も忌憚なく描いている。そんな卯月さんに、病との半生を振り返ってもらった。

実録漫画としては異例の12万部の大ヒットとなった『人間仮免中』

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“自由さ”が際立っていた幼少期

 卯月さんは1971年、岩手県宮古市に3人姉妹の長女として生まれた。同市は港町で、海や山、田んぼなど豊かな自然に囲まれた環境だった。

 幼少時の卯月さんは、自分で丸刈りに近いほど髪の毛を切り、男の子たちと毎日泥だらけになって遊んでいたという。野良犬たちと口をベロベロ舐め合い、菌に感染して顔中がまだらになって、母親から怒られたこともあった。

「ホームレスのおじさんからエッチな話を聞かされたり、漁師のおじさんからコバンザメをもらって解剖したり、カビを採取して繁殖させたり。いろいろな遊びをしていましたね」

 そんな牧歌的な町でも、卯月さんの“自由さ”は際立っていた。保育園のころから落ち着きがなく、集団行動が苦手。授業には参加せず、一人で遊んでいることもしばしばだった。通っていたそろばん教室を、「ほかの生徒の邪魔になるから」と辞めさせられたこともある。園からは精神科にかかることを勧められたこともあったという。

女優時代の卯月さん 本人提供

統合失調症を発症したきっかけは…?

 そして10歳のとき、統合失調症を発症した。きっかけは、一番下の妹の突然死だった。

 自宅で祖母と遊んでいた妹が、祖母が少し目を離した間に洗濯物の山に顔をうずめて倒れていたのだ。死因はわからず、変死という扱いだった。