2021年秋に、11年間の現役生活に終止符を打った、元日本ハム投手の斎藤佑樹さん(33)。汗をマウンドで拭う姿が「ハンカチ王子」と呼ばれ、一世を風靡した2006年夏の甲子園から、16年が経った。「株式会社斎藤佑樹」の設立や、全国の高校球児の取材、CM・バラエティー番組への出演など、多方面で活動を始めている斎藤さんに今後の展望を聞いた。(全3回の3回目。#1#2を読む)

「球場にアート作品を飾って野球に興味のない人にも足を運んでいただきたい」と構想を話す斎藤佑樹さん (撮影:深野未季/文藝春秋)

◆ ◆ ◆

ワクワクするようなアマチュア野球界を掘り起こしていきたい

――でも「株式会社斎藤佑樹」を立ち上げた。

ADVERTISEMENT

斎藤 今のところ、良かったと思っています。

 会社の理念は「野球未来づくり」にしました。僕がこれまでの野球人生で培ってきたことや人脈などを活かして、野球界、特にアマチュアの世界をもっと楽しく未来あるものにしたいと考えているんです。

 以前と比べれば、高校、大学の試合の入場者数が減ってきていますし、そもそも野球をやる子供たちの数も減少傾向にある。もちろん、野球をやってみて自分には合わないと考え辞めるのはいいんですけど、野球に接する機会がないまま大人になるのはもったいないな、って。

 ですから今、知恵やアイディアを蓄えて、近い将来、ワクワクするようなアマチュア野球界を掘り起こしていきたい。

撮影:深野未季/文藝春秋

 ほかにもやりたいことはいっぱいあって、今IT技術者やアート界の人たちにお会いしているのは、球界にIT技術を投入し、選手の凄さをデータや画像分析などで可視化して見せたり、球場にアート作品を飾って野球に興味のない人にも足を運んでいただきたいからです。

 また、アナリストやトレーナーさんなどのスタッフの待遇改善にも取り組んでいきたい。アメリカでは彼らの給料は高額です。なぜなら選手のパフォーマンスに大きく関わってくるから。選手がもっとプレーしやすい環境を作るとなると、スタッフの待遇の改善も考える必要があると思うんです。彼らは選手のパフォーマンスに直結しますからね。

 彼らの価値を訴えていくというのも、僕ができることなんじゃないかと。

――例えば、提言に説得性を持たせるために、大学院でより知識を深掘りするという考えはなかったんですか。