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前世の記憶があると自称していた80年代の「転生」

 この時代には、こうした「転生」をテーマにしたヒット作が数多くあった。

 代表的な作品が、劇場版アニメ『幻魔大戦』である。1983年に「角川アニメーション映画」の第1弾として公開された本作は、配給収入10億6000万円を記録(一般社団法人日本映画製作者連盟調べ)。同年5月にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『楢山節考』や、同時期に公開がはじまった『宇宙戦艦ヤマト 完結編』や『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』を上回るヒットとなった。

『幻魔大戦』では、超能力に覚醒した主人公が前世から転生した世界各地のエスパーたちと協力し、大宇宙の破壊者・幻魔大王との最終戦争(ハルマゲドン)を戦うことになる。そして物語のクライマックスでは「あらゆる生物は絶え間なく輪廻転生していく」とのメッセージが語られる。オカルト誌の「前世の仲間探し」で好まれたキーワードもしばしば登場してくる作品である。

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 なお、転生を題材とした作品は、80年代のオカルトブーム以前にも存在した。とくに有名なところでは、三島由紀夫の『豊饒の海』シリーズや手塚治虫の『火の鳥』が挙げられる。ただし、これらの作品における転生者には、前世の記憶はない。

『暁の寺』(『豊穣の海』第三部)に出てくるシャムのジン・ジャンは、幼少時に飯沼勲の生まれ変わりであると口にしていたが、成長後にはその事実を忘れていた。彼女が本当に勲の生まれ変わりかどうかは、物語のひとつのフックとなっている。あるいは『火の鳥』の場合、猿田博士や猿田彦、我王は共通した記憶を有していない。

 80年代のオカルト雑誌に登場した転生者たちは、前世の記憶があると自称していた。その点で、それ以前の転生ものとは異なる。この時代の空気感の中でブームが増幅されていったといえるだろう。

いよいよ拍車のかかるブーム。ついに「ムー」編集部も…

 こうした時代背景のもと、「花とゆめ」(白泉社)1987年1号から連載を開始したのが『ぼくの地球を守って』(日渡早紀)であった。

 

 本作の主人公たちは、月の基地で暮らしていた前世の記憶を共有し、「学嫌社」が出版する不思議体験誌「BOO(ブー)」の文通欄を通じて、さらなる仲間探しをする。つまり、オカルト雑誌での「前世の仲間探し」ブームを知ったうえで、その事例をパロディ的に作品に用いたわけである。

 ところが、この作品がヒットしたことで、「前世の仲間探し」ブームにはいよいよ拍車がかかっていく。

 その過熱ぶりに、「ムー」編集部は1988年5月号に以下のような読者投稿を掲載した。