最近、本誌のコンタクトプラザを見ていると、やたらに「戦士」という言葉が目につきます。昔から本誌を愛読している僕にとって、“?”でしかありません。いったい、何が「戦士」だというんでしょうか。(中略)僕は、いま、たまらない危機を感じています。「戦士症候群」がこのままじわじわと広がっていったら……。気がついたら、世界じゅうに蔓延していたとしたら……。
「戦士症候群」とは、まさに言い得て妙な表現だ。実際にこれが読者からの投稿だったのか、あるいは過熱ぶりを懸念した編集部の手によるものであったかは今となっては定かではない。ともあれ、「ムー」は1988年6月号から「前世の仲間探し」に関する投稿を載せない方針を打ち出す。いっぽうで「トワイライトゾーン」誌は、1989年12月に休刊するまで「前世の仲間探し」の投稿を掲載し続けた。
そしてその日、ついに事件は起こった
「前世の仲間探し」が、“ごっこ遊び”の延長で済めばよかったが、ついに事件が起きてしまう。1989年8月16日、徳島市内の少女3人(14歳ふたり、10歳ひとり)が自殺未遂を起こしたのである。少女たちは映画を観に行った帰りに鎮痛剤を服用し、午後9時少し前に路上で意識不明になっているところを救助された。
これが単なる集団自殺未遂と異なる点は、少女たちは事前に病院に事故を告げる電話をかけていた点だ。
救助された少女たちは、自殺を図るが結局は助かるという「予定表」を持っていた。少女たちは、前世で「エリナ」や「ミルシャー」といった名前のお姫様であり、死にそうになることで前世の記憶を取り戻そうと考えていたという。
「このマンガはバリバリの頭の中だけで組み立てられているフィクションです」
事件後、『ぼくの地球を守って』の作者・日渡早紀は、コミックス第8巻(1989年12月初版刊行)で「『ぼくの地球を守って』というマンガは、始めから最後まで間違いなくバリバリの日渡の頭の中だけで組み立てられているフィクションです。実際に在る話をドラマ化したわけでも何でもありません。フィクションの中だから展開出来るお話なんです!!」と、現実とフィクションの区別を促す異例の声明を発表した。
「自分は他人とは違う」と思いたい思春期特有のナルシズムは、誰しも覚えがあるはずだ。転生を題材とした作品は、80年代当時に「生きづらさ」を感じていた10代少女たちの心の隙間を“妄想”で埋め、彼女たちの孤独を救った側面もある。しかし、ひとりの“妄想”を複数人で共有することの危険性が示されてしまったのも事実だ。
また、その後への影響などを鑑みても、この時期のオカルト雑誌は、オカルト情報を無批判に掲載していた傾向が強く、その危険性に無自覚であったと言わざるをえない。