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2022/05/25

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 読書

「1000億円稼いだ」高山のシノギとは

 名古屋を中心とした中部地域での高山のシノギのうち、特に中部国際空港建設の利権が大きかったことは以前から指摘されてきた。6代目山口組の事情に詳しい指定暴力団幹部が解説する。

「シノギは何と言っても中部国際空港が最も大きい。全部合わせれば1000億円稼いだとも言われている。砂利をはじめ生コン、基礎杭など諸々の建設資材などの調達に、ダンプカーなどでの運搬でも、手数料や紹介料などの名目で(弘道会に)カネが落ちるような仕組みを作って利権を拡張していったようだ。

 例えば建設工事、土木工事などは現場周辺の騒音や粉塵などがつきもの。事業主は地元対策として迷惑料などの名目で予算を組んでいる。この予算の何割かが弘道会に吸い込まれる。すると、ヤクザをバックにした土建会社などが『仕事を回せ』と言って来ても、山口組の名前で排除できる。

 ヤクザをバックにした恫喝(どうかつ)的な会社だけではない。『環境破壊につながる工事は即刻中止せよ』などと、環境保護を訴える団体が押し寄せてくることもある。実は環境保護団体を名乗っていても、実態はゆすりや、たかりを目的とする『会社ゴロ』『企業ゴロ』といった類いの連中だから、それも引き下がらせる。

 力のある組織にはカネが集まり、カネが集まれば若い衆も集まる。そうやって組織が大きくなれば、新たなシノギの話も舞い込んでくる。そうなると、表の事業家たちも集まってくる。うまい具合に転がっていくということだ。

 水は高い所から低い所に流れるが、カネはそうじゃないんだ。強い所に吸い込まれるんだよ」

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 現在は暴力団排除というコンプライアンスが徹底されつつある。暴力団などの反社会的勢力は表の経済から排除されるようになり、暴力団業界の苦境が伝えられている。だが、実際に企業と暴力団との関係が完全に遮断されているかどうか、不透明な部分もあるのが実態だろう。

 警察庁幹部も当時の中部国際空港の利権について補足する。

「中部国際空港の建設をめぐって、砂利については合法、違法を含め(弘道会にとって)大きな利権だった。採取地は中部地区の広範囲にわたっていた。違法に採取した砂利は、ある会社を通すとクリーンな砂利になって、正規に納入されていたようだ。違法な砂利のロンダリング(洗浄)だ。そのほかセメントだ、何だとあらゆる利権に手を出して、徹底してシノギの範囲を広げていた」

 警察当局は高山のシノギをめぐって一時期はかなり捜査を進めていた。だが、6代目山口組弘道会の上層部にまで捜査が及ぶことはなかった。