データで〝丸裸〟にされた選手たち
そのデータは毎日の練習、あるいは試合内容によって日々書きかえられた。
選手らは当初、テストの成績を常にさらされているようで嫌がった。しかし次第に、このデータの有効性を理解出来るようになる。
スポーツ界では「頑張れ」、あるいは「根性を入れろ」という言葉が常套句のように使われているが、実は非常に曖昧模糊とした言葉。何をどう頑張れば良いのか分からない。
眞鍋は、この「頑張れ」の意味を数値化し、選手それぞれの課題を明確にしたのだ。すると、選手らも自ら打開策を考えるようになり、それぞれに高い意識が目覚めた。
そればかりではない。毎日突きつけられるデータは、自己対峙する上でことのほか役に立ったと大友が言う。
「練習とか試合は夢中になっているので、自分を見つめることはない。だけど、データを見ると、ああ、このとき少し引けていたからこういう数字になったんだとか、勢い込み過ぎてこんな数値になってしまったとか、記録を見ながら自分の心理を呼び戻して、心の反省が出来るんです」
眞鍋が最も力を入れたのは、選手個々の精神的な自立だった。剣が峰の闘いでは、選手の主体性がモノをいう。これまで、日本女子バレーが低迷を続けてきたのは、指導者に寄りかかるばかりで、選手が自らの頭で考えようとしなかったからだ。
研究熱心な眞鍋はあるとき、ラグビーのオールブラックスが、なぜ鉄壁の強さを誇るのか興味を持った。人口440万人の小さな国のニュージーランドが、世界の頂点に立ち続けている理由を知りたいと、オールブラックスについて記されているあらゆる書物を読み漁り、時にはラグビー関係者に意見を求めた。実際、スタッフをニュージーランドに送り、システムも研究させた。その結果分かったのが、国の磐石なシステムに守られながらも、選手個々の自立、主体性が確立されていることだった。