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連載日の丸女子バレー 東洋の魔女から眞鍋ジャパンまで

「そもそも、人の話を聞いていない。こいつは化ける」〈女子バレー〉眞鍋ジャパンを牽引した“2人のエース”

日の丸女子バレー #38

2022/04/23

もっとも選手と対話したリーダー

 眞鍋は全日本女子を改革する数々の戦略に着手した。

 女子バレー選手はとかく感情で動きやすい。中・高校時代に、監督は絶対的な存在と刷りこまれているため、自分の頭で物事を考える癖が出来ていない選手が多かった。監督の指示は絶対と考える反面、ちょっとしたことでそっぽを向く。そこで眞鍋は、選手に自立心を喚起させることに加え、監督の顔色をうかがうような精神を消し去らせようと、チーム内に「公平性」「明確さ」「透明性」を徹底した。チーム内の人間関係を可視化したのである。

「久光時代の反省があるんです。レシーブが苦手な選手に個人練習を付き合っていたときがあった。すると、選手全員がよそよそしい態度を取り始めたんです。僕が何かしたかな、と考えたらどうも、その選手をえこひいきしていると誤解されてしまったみたいでした」

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チーム内の人間関係を可視化した ©JMPA

 そんな経験もあり、全日本では公平性、透明性を明確にするため、選手個々のパフォーマンスを数値化し、そのデータを練習場の壁に貼った。スパイク決定率や効果率、ブロック、サーブ、ディグ、サーブレシーブの成功率などの個人データを、誰の目にも触れるようにし、この数値の高い順からコートに立てることを宣言する。

 しかも、選手個々の数値には、ロンドン五輪でメダルを獲るための数値目標まで記載されていた。目標設定をクリアしていれば黄色、下回っていたら赤でマークする念の入れようだった。