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「犯人が小説みたいなら……」

西村 鉄の灰皿で殴って殺したのがあります。

山村 ああ、昔、青銅の置物なんてよくありましたね。

西村 指紋さえ残さなければ犯人がその場を逃れやすいし。うまくいかなくても、記憶を喪失してくれる。

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山村 犯人が小説みたいに登場人物が限られていると絞りやすくて、これからも用心出来るんですけどねぇ(笑)。

山村さんの執筆風景 (『西村京太郎の推理世界』より)

西村 ところで山村さん、ホントに記憶喪失なんですか(笑)?

山村 ま、先生まで。

西村 ご当人がなったといってるんだから本当なんだろうなあ。私はなったことがないから。

山村 私もね、人が記憶喪失になったといったら、都合のいいことをいって何か隠しているのだろうと思いますからね。

西村 でも良かったですね、記憶喪失が事件の部分だけで。

山村 ホント。ずいぶん長いこと記憶を喪失している人がいるんですってね。過去を忘れちゃう人も。私のは部分だけでよかったと思います。

西村 全部忘れちゃったら作家稼業はできなくなっちゃう。じゃキャサリンとしては、犯人はやっぱり空き巣ですか。

山村 空き巣だというと、面白くないわ(笑)。しかしデータ不足でよくわかりません。十津川警部におまかせしますわ(笑)。

西村 やはり山村さんを狙ったんだと思うなあ。空き巣だったらそんなに殴っていかないと思うんですよね。突き飛ばして逃げるとかねぇ。それで、盗られたものはないんですか?

山村 現金が失くなっているらしいのですが、それ以外はわかりません。今の話だけど、昔とちがって今は空き巣がすぐ強盗化してしまうんですって。顔を見られると殺しちゃうって。

西村 いたずらや勧誘、セールス、あらゆるものが来ますからねぇ。

山村 警察は近所のききこみや娘たちのアリバイまで調べていましたけど、先生のとこは行きませんでした?

西村 いや、来ませんでしたよ。

山村 あれ、警察もドジだ(笑)。先生あの時どこにいらした。