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「中学時代の自分に言ってあげたい…」ボクシング・村田諒太が死闘の直後に向かった池袋の“意外な場所”

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村田のメンタルを支えた“読書”

 趣味の読書もメンタル面を支えた。試合前に読破したのは、天台宗の僧侶を描いた『超人の教え』(中尾清光著)。約8年間、村田のトレーニングを担当してきた中村正彦氏が証言する。

「試合が延期になるたび、『やってられないっすよ』と半分冗談、半分本気の発言をよくしていましたが、彼は自分の弱さに正面から対峙できる選手なんです」

プロ戦績は16勝(13KO)3敗に

 一方、フィジカル面は過去最高の仕上がりだった。

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「力の絶対量は日本人離れしていてゴロフキン以上。排気量はミドル級の選手では世界一だと思いますが、それは日々の節制や努力の賜物。また、彼の良いところは成功体験に固執せず、いろんな人の話を聴くこと。最後は自分のフィルターを通してトレーニング方法などを決めるのです」(同前)

「中学時代の自分に言ってあげたい。今日がゴールです」

 試合当日の深夜、東京・池袋のダーツバー。そこに現れたのは、死闘を終えたばかりの村田だった。足元はふらつき、顔は腫れ上がっている。貸し切りの店には180人を超える地元のボクシング関係者や後援会のメンバーが集結。村田は支えてくれた仲間たちに直接、感謝を伝えたかった。

 突然の“主役”の登場に割れんばかりの喝采が湧き起こる。仲間がゴロフキンの攻撃のダメージを心配すると、村田は「事故に遭ったようなもんです」と微笑み、そしてマイクを握った。

「中学時代に世界一を目指して、本当に世界一になれた。逃げずに嘘をつかず、成し遂げられたことを中学時代の自分に言ってあげたい。今日がゴールです」

 試合後、村田の祖母・高本悠子(はるこ)さんの脳裏に浮かんだのは、ヤンチャだった少年時代の姿。祖母は「負けた試合だったけど、終わって安心しています」と言って、ホッと息をついた。

「中学時代の自分に言ってあげたい…」ボクシング・村田諒太が死闘の直後に向かった池袋の“意外な場所”

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