近年、スポーツの指導現場におけるハラスメントが社会問題になっている。そこには、指導者による暴力・パワハラ・セクハラだけでなく、わが子の活躍のためになりふり構わない“スポーツ毒親”たちの恐るべき実態も潜んでいるのだ。

 ここでは、スポーツライターの島沢優子氏が“スポーツ毒親”の姿を記した『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)から一部を抜粋。九州の私立高校女子バスケットボール部での、外部コーチCの性的暴行事件を紹介する。(全4回の3回目/4回目へ続く

この写真はイメージです ©iStock.com

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女子バスケットボール部の外部コーチCがホテルで部員に性的暴行

 晃一(以下全員仮名)は、思い切ってひとりの生徒に事の真偽を尋ねた。

「Cさんから、遠征先でホテルの部屋に呼ばれたことはあります。いま、ここで、俺の横に一緒に寝てくれたら、スタート(先発メンバー)に、してあげるよって言われました」 

 生々しい内容だった。覚悟はしていたものの、現実に証言を聞くとショックだった。 

「私はそこまでしてスタートになる必要はないので、断りました」

 大人の欲望を振り払った18歳は、しっかりと答えた。

 先発で出たいという子どもの意欲をもて遊ぶようなCのやり方に、晃一は同じ指導者として恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。

「昼間は殴って、夜は一人ひとり(部員を)自分の部屋に呼んでやさしい言葉をかければ、 部員はついてくるようになる」

 Cの性的暴行の容疑が固まり3度目の逮捕をされた際、Cが他校のコーチに語ったと報じられたものだ。この「殴られた後にやさしくされると従ってしまう」心理は、DVにも見られる特徴だ。

 自分がレギュラーになれるかどうかを決めるCに対し、立場の弱い生徒らがトラウマ性の結びつき、もしくはそれに近い心理に陥るのは当然のことに思える。そして、この心理構造は、Cと親たちの間にもあったのかもしれない。