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「娘さんが叩かれたこと、だれかに言った?」30人に囲まれて4時間の“犯人探し”…パワハラ監督を守る毒親たちの“ヤバすぎる倫理観”

『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』より #2

2022/05/05

source : 週刊文春出版部

genre : ライフ, 教育, 社会, スポーツ

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 近年、スポーツの指導現場におけるハラスメントが社会問題になっている。そこには、指導者による暴力・パワハラ・セクハラだけでなく、わが子の活躍のためになりふり構わない“スポーツ毒親”たちの恐るべき実態も潜んでいるのだ。

 ここでは、スポーツライターの島沢優子氏が“スポーツ毒親”の姿を記した『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)から一部を抜粋。強豪バレーボールクラブで監督をする50代後半の男性監督Bの体罰と、それを隠ぺいしようとする保護者たちの生々しいやりとりを紹介する。(全4回の2回目/1回目から続く

この写真はイメージです ©iStock.com

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男性監督Bの暴力をリークした犯人探し

 7月上旬。美香(以下全員仮名)の娘・理子(小学6年生)への暴力は、日本小学生バレーボール連盟(日小連)の傘下である大分県小学生バレーボール連盟(県小連)へ通報された。後にわかったことだが、通報はBの指導に不信感を抱いていた同クラブのコーチによるものだった。8日前後にBや保護者会長らに県小連から暴力の有無の確認があり、親たちにも知らされた。そこから「誰がリークしたのか」と犯人探しが始まった。

 母と娘の地獄は、そこから始まった。

 7月16日18時半、町内の公民館でチームの保護者会が開かれた。日ごろからチームの祝勝会や慰労会などを行う部屋で20数畳近い広い和室。座布団も出されず、現役選手の親たち15人ほどがコの字型になって腰を下ろした。Bの姿はなかった。

「悪くすれば、B先生が指導できなくなります。裏切りは許せません。このなかに絶対に(リークした親が)いると思っています」

 保護者会長の男性がおもむろに立ち上がり、「一人ひとり、話を聞かせてください。じゃあ、そっちの端から」と口火を切る。自分がリークしていないことを証明したい親たちは、犯人探しに躍起になった。

「内部の問題を通報してどうするの⁉」

「犯人は誰?こんなことをしたら部がつぶれるじゃない」

 親たちの視線は、美香と聖子に向かっていた。美香はわかるが、聖子はなぜか。実は7月5日に娘の5月が練習中チームメイトとけんかになり、もみ合った際に指を骨折していた。子どもなのでそういうこともある。ただ、問題はBがその日は不在だったことだ。それなのにBは聖子ら保護者に監督不行き届きの謝罪もせず、逆に「オレがいないときに騒動を起こして」と怒っていた。それを問題視した聖子は夫とともに保護者会にそのことを訴えていた。だから疑われたのだ。

 娘が暴力を受けた美香の番になると、ほかの親がたまらずといった様子で言葉をぶつけてきた。