2014年度版の内閣府調査でも、「自分に満足」という若者の比率は、欧米諸国で80%台なのに対して日本では40%台、「自分には長所がある」という人の比率は、欧米諸国では90%前後なのに対して日本では60%程度となっている。
そんな私達が親になって子どもがスポーツで少しでも秀でると、過度に期待する傾向がある。取材でそんな親たちを何人も見てきたが「自分が行けなかった全国大会へ」など自分の身代わりヒーローを期待する向きがあった。子どもの活躍によって、自分の自己実現を果たそうと依存する。活躍すればよいけれど、そうでなくなると期待したぶん怒りがこみ上げる。この構造は受験が絡む教育虐待とも似ていた。
逆に自己肯定感の高い親は、子どもを「あくまで自分とは違う人格」ととらえる余裕があった。負ければ「残念だったね」と慰めるが、自分まで貶められた敗北感を抱かない。
つまり、共感すれど同化はしない。そのように精神的に自立した大人の実数が少ないのではないか。
また、子どもにスポーツをさせている親たちは、なぜこんなに揉めるのか。彼らが当番を無理強いする様子は、例えばマタニティーハラスメントや小さな子どもを育てる家庭の社員に残業を強いる企業の姿と重なる。平等の名のもとに「非効率」に映る人が排除され、柔軟性に欠ける。そんな不寛容な社会が、スポーツ親の当番問題の背景にあるのかもしれない。
日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多い
もうひとつ、紹介したい研究データがある。
『ニューズウイーク日本版』経済ニュース超解説(加谷珪一/2021年5月「日本経済、 低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大学などの研究で判明」※https://president.jp/articles/-/46265)によると、日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多く、他人の足を引っ張る傾向が強いそうだ。
大阪大学社会経済研究所を中心とした研究グループが、被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人はアメリカ人や中国人と比較して「他人の足を引っ張る行動が多い」という結果が得られた。ともに協働してやらなくてはいけないところを、互いに相手の行動を邪魔しているというのだ。
意地悪で、他人の足を引っ張る。本章で伝えてきた親たちに通じる特徴だ。他者の立場を慮ることができず、当番を押し付ける。嫌がらせをする。(ああ、嫌だ、こうはなりたくない)と思いつつ綴ってきたが、この傾向は私たち日本人に言えるものらしい。
また、同大学の別の研究グループによると「新型コロナウイスルに感染するのは自業自得だ」と考える日本人の比率は 11・5%と、中国の4・83 %やアメリカの1%などと比べて突出して高かった。