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野村監督の発想が21世紀のいまも生きている
スワローズのユニフォームを着て、初めてこのチャートを見たときにはたまげた。これはとんでもない世界に飛び込んでしまったとも思った。野村監督のチームでは、これだけのコントロールの精度を求められるのか、と。9分割で考えていては、打たれる。25分割(81分割)にコントロールできなければ、プロとして成功できない(実際、そうだった)。
スワローズ・バッテリーは、いまだにこのチャートを使って考える。ミーティングでも相手打者の分析には、この数字を使って説明する。このチャートは、言語を超えた「伝統」になったのだ。
スワローズに新しく入団してきた投手、捕手は、「35」「23」といった数字を学び、チャートのどこにコントロールするかを身につけていく。ピンチを迎えたときに、捕手はチャートのストライクとボールの境界線に球を要求する。そこに投げられるのか――。それが、その投手の能力につながる。
詳しくは書けないが、とある番号のことをスワローズでは「原点」と呼ぶ。その原点に制球する力を「原点能力」と呼んでいる。
この言葉ひとつ取ってみても、野村監督の発想が21世紀のいまも生きていることがお分かりいただけるだろう。
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