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未解決事件を追う

「警察には絶対に言わんとって。殺されるから」角田美代子の“喰い物”にされた一家の悲惨な末路とは

「警察には絶対に言わんとって。殺されるから」角田美代子の“喰い物”にされた一家の悲惨な末路とは

「尼崎連続変死事件」の謎 #2

2022/05/05

genre : ニュース, 社会

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 じつは野球少年として将来を有望視され、実直に生きていたマサが、定職に就くもグレてしまい、暴力団員との付き合いが生まれた原因は、勝一さんとリツ子さんの、乱れた生活が原因だという声が多い。リツ子さんの姉はかつて私の取材に次のように答えている。

「リツ子と勝一、あのふたりが悪いんや。とくに悪いのは再婚相手の勝一や。うちのダンナもあいつの保証人になって、銀行行けへんようになってしもうた。その勝一がリツ子と一緒んなってマサに借金を押しつけてからに、そんでマサはあないなってしもたんや。あの子も昔はええ子やったんやで。マサが高校出てせっかく××金属みたいなええとこ勤めたいうのに、ちゃんとした会社やからカネ借りれるいうて、あのふたりがマサを保証人にしてカネ借りまくっとったんや。ほんで職場に取り立ての電話がバンバンかかってきてな、おり辛うなってもうて、会社辞めんとしかたなくなったんや。それからや、マサがおかしいなったのは」

勝一さんは美代子に多額の借金を繰り返していた

 借金はギャンブルなどの遊興費で生まれたものだったが、それだけではない。リツ子さんの逮捕についても姉は触れている。

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「会社辞めた後もマサは両親と弟と住んどった。けどリツ子が覚せい剤で捕まって、そんで行くあてもなく、角田美代子いうわけわからん女とつながりができたんや」

 実際にはマサは、共通の知り合いがいたことから、リツ子さんの姉が思っているよりも前に美代子と知り合っていた。だが、その関係が深まったのは、両親と美代子との関係が大きく影響していることは間違いない。というのも、借金で首が回らなくなった勝一さんは、美代子に多額の借金を繰り返していたのである。美代子の昔からの知人は言う。

尼崎事件の捜査で漁港の海中からドラム缶を引き揚げる兵庫県警の捜査員 ©時事通信社

「角田のオバハン(美代子)と知り合った勝一は、その後で弟の敏二(仮名)と一緒にオバハンの家で世話になっとったんや。借金でいよいよ首が回らんようになってな、オバハンが預かるいうかたちで、面倒見とったわけや」

 つまり末吉家の長男と次男が、美代子の下にいたわけである。彼らの妹である信枝さんが巻き込まれることになるのは、それからもう少ししてからのことだ。

 本来であれば03年に勤務先の小学校を退職予定だった勝一さんは、美代子に勧められるまま、02年11月に前倒しで退職する。その際に退職金約1700万円を受け取っている。このことについて、後の「角田ファミリー」の裁判に証人として出廷した勝一さんは、自身が受け取った退職金のうち、約1100万円を美代子に渡したと説明したうえで、次のように証言した。

「当時、サラ金に約300万円の借金があった。美代子から『銀行に入れると差し押さえられる。私がサラ金に話をつける』と言われて預けました」