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監禁状態に置かれ財産を奪われ、殺害される

 そこで豊さんが改めて、美代子に断わりの電話を入れたところ、今度は美代子が「角田ファミリー」を引き連れて自宅に乗り込んで来たのだ。このようにして谷本家は徐々に侵食されていき、豊さんを心配した彼の兄・裕二さん(仮名)、それに妻の初代さん、娘の茉莉子さんと瑠衣、さらに信枝さんなどが、尼崎市の美代子の下で、監禁状態に置かれてしまうのである。

 結論から言ってしまうと、谷本家の財産と信枝さんが相続した桐原家の財産はほとんど奪われ、裕二さん、さらに初代さんと茉莉子さんの3人が殺害(うち裕二さんと初代さんは傷害致死)される。そして瑠衣は逮捕され、信枝さんが行方不明となってしまう。また、それより前の段階においては、初代さんと信枝さんの母である末吉トキさん(仮名)も殺害(傷害致死)されている。

谷本茉莉子さん、谷本裕二さんの遺体が発見された ©小野一光

 彼らが最初に目の当たりにした“人殺し”であるトキさんの死亡は、初代さんが尼崎市に行ってわずか2カ月後、03年3月のことだった。場所は尼崎市にある美代子のマンション内だったが、その場には高松市から再び連れてこられた初代さんや信枝さんもいた。同じくその場にいた、マサの弟で、勝一さんとリツ子さんとの間の息子、すなわちトキさんの孫にあたる田中克也さん(仮名)は語る。

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「そのときは亡くなって悲しいとか、そんな状況ではなかったです。部屋では初代おばちゃんと信枝ちゃん、あと、茉莉ちゃん(茉莉子さん)が泣いていたような……。泣いて悲しんでいたのはその3人くらいでした」

 トキさんの遺体は、美代子の指示で、克也さんと叔父の敏二さん、マサの3人が高松市の農機具小屋に穴を掘り遺棄したのだった。