“令和の怪物”佐々木朗希が東大野球部に入学してきたら…?
逆に上級生になれば自分の能力の限界が見えてくる選手もいる。
「『大学野球で燃え尽きたい』と決める選手ももちろんいます。そういう選手に関しては、私は酷使します。連投もさせたし、球数を多く投げさせることもありました。そこは本人の意思と、傍から見て分かる能力と相談しながら方針を決めますね」
では、もしも、もしもだ。
例えば現ロッテの“令和の怪物”佐々木朗希が東大野球部に入学してきたとしたら、浜田氏はどんな進路指導をするのだろうか? 何を基準に彼の未来を助言するのだろうか? すると、こう答えてくれた。
「基本的に日本のエースになるべき人材ですから、たとえ彼が『チームと仲間のために大学野球で燃え尽きたいんです』と言ったとしても、プロに行かせる方向で指導はします。その際、ひとつの指針になるのはおカネの話です。例えば東大を卒業した人の平均生涯年収は4億5000万円から4億6000万円と言われています。でも、メジャーリーグに行ったら、1年でこれくらい稼げちゃいますよね(笑)。佐々木君だったらそうなる可能性が相当程度ある。
逆に言えば、能力的にギリギリプロに行けるかどうか…という選手が『野球は大学までで終えたい』というのであれば、それはその意思を尊重しますね。学生には『生きがい×収入』を考えるように指導しますが、プロで活躍できる可能性が高い人材にはそれに見合った指導をしますよ」
これまでの東大野球部の活動を振り返ってみると、東京六大学野球で通算255勝1692敗59分けの戦績を持つ。この数字を見て、皆さんは何を考えるだろうか?
勝利を目指すべきなのか、はたまた部での活動を通じて別の何かを目指すべきなのか――。日本の最高学府で野球をすることの意味を考えることは、スポーツの価値を問い直すことにもつながるのではないか。