ノンフィクション作家・川内有緒さんが昨秋上梓した『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』。タイトル通り、白鳥建二さんという全盲の美術鑑賞者とともに、美術館を訪れてはアート談義を重ねたことをテーマにしたノンフィクションだが、この本の帯に言葉を寄せたのが、ダウン症の弟と車椅子ユーザーの母との日々を綴った『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』がベストセラーとなった作家・岸田奈美さん。
目の見えない人と絵を見にいくとは? 障害をもつ家族と暮らすこととは?「わかりあえる」と「わかりあえない」の間を、川内さんと岸田さんが語ります。(全2回の1回目。後編を読む)
人と人とは「わかりあえない」という真理
川内 『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』の帯に推薦文をくださってありがとうございました。「誰かとわかりあえない寂しさを、幸福な余白に変えてくれる本でした。」。この言葉をいただいたとき…ちょっと意外に思ったんですよね。
岸田 え? 外しましたか?
川内 いや、思ったよりもしっとりしてるなと…。
岸田 人様のご著書にそんな! 砂かけたりしませんよ!(笑)
川内 いやいや、それはそうなんですけど、ここを拾ってくださったか、と。
この本は、白鳥建二さんという、目が見えないんだけど美術館を訪れてアート鑑賞を続けている美術鑑賞者と、私と友人たちが、一緒にいろんな美術館に行って作品の前であれこれ話したことについて書いたものですが、ちょっと内容の予想がつかないというか、読んでいて行き先がわからない感じがすると思うんです。実際、私も書きながらどうやって着地させればいいんだろうと悩んだし、本ができてからも担当編集者に「誰も買ってくれないと思う」って言っていたほどでしたし。
岸田さんが拾ってくださった「誰かとわかりあえない寂しさ」というのは、この本の最後の最後に私が辿り着けたところなんですよね。
岸田 私もずっと、「わかりあえないもどかしさ」について思っていたので、それがこの本でちゃんと言葉になっていることに衝撃を受けました。でも確かに最後まで読まないとわからない言葉でしたね…。